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美術館訪問記-96 訪問チャペル美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:モナコ=ヴィレから見たモナコの街並み

添付2:訪問チャペル美術館正面

添付3:訪問チャペル美術館内部

添付4:スルバラン作
「聖セバスティアンの殉教」

添付5:ルーベンス作
「聖ペテロ」 

添付6:リベーラ作
「聖バルトロメオの殉教」

添付7:フェルメール作
「聖女プラクセデス」
バーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクション基金蔵

前回、国民一人当たりの所得は、購買力平価ベースでは、 ルクセンブルクが世界一と言いましたが、 一人当たりの国民総所得では、モナコ公国、通称モナコが世界一。

モナコは国連加盟国の中では世界最小で、面積僅かに1.95k㎡。 つまり2km x 1kmの長方形の中に収まってしまう。人口3万人余り。

ここに「訪問チャペル美術館」があります。

場所はモナコ大公宮殿と海の間、モナコ・ヴィレという岬の丘の上にあるのですが、 いろいろと試してみても、その地区に車で入る事ができない。

住民証か特別な許可証を持っていないと、 いずれも地区の入口で警察官に止められてしまいます。

しかたがないので、地区の手前にあった駐車場に車を停め、 歩いて坂道を登りました。

ここから見る、湾と対岸のモンテカルロの眺めはなかなかのものです。

訪問チャペル美術館は昔教会として使われていたものが、 そのまま美術館になっているもので、入場料を払って入ります。

「訪問」とはVisitationの事です。

英語では、文中でも大文字のVから始まるこの語は、 聖母マリアが受胎告知の折に、 親類のエリザベトが妊娠6カ月であることを知らされ、彼女を訪れたという ルカ福音書の出来事を意味します。

ここは昔、その出来事を記念した教会だったのです。

『訪問』は絵画の主題にもよく採り上げられています。

エリザベトから生まれる子が洗礼者ヨハネで、後にキリストを洗礼し、 サロメに、踊りの褒美に首を所望され、斬首される事になります。

美術館に入ると、昔主祭壇だった正面に17世紀制作のタペストリーが掛けられ、 その下に17世紀にスペインで描かれた、 12使徒と洗礼者ヨハネの13点のモノトーンの油彩画が並んでいます。

両側の壁にスルバランの「聖セバスティアンの殉教」、 ルーベンスの「聖ペテロ」と聖「パウロ」、 リベーラの「聖バルトロメオの殉教」の4点と作者不詳の2点が掛っています。

入口上の壁にイタリア人画家による宗教画2点。

コレクションはこれだけ。

何れも17世紀のバロック絵画で、高さ2mを超す大作揃い。

これらは全て、バーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクションからの 長期貸与となっています。

このバーバラ・ピアセッカという女性がチョット面白い。

1937年ポーランドで生まれ、大学の美術史科卒業後僅か100ドルの所持金で渡米。

製薬業界世界第2位のジョンソン・エンド・ジョンソンの創設者の息子の奥さんに コックとして雇われますが、余りの料理の下手さに1ヵ月後にジョンソンの 部屋付き女中に転向。1年後にはジョンソンの収集品の学芸員に転向。

1971年、ジョンソンと結婚。2人の歳の差は42歳。この時ジョンソンは76歳。

1983年、ジョンソンが死亡した時に、全財産を彼女に残すという遺言書があり、 前妻、前々妻との間に生まれていた6人の子供達との裁判となりましたが、 遺産の12%を子供たちに支払う事で決着。

2013年のフォーブスの長者番付では彼女は世界376位にランクされています。

このバーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクションのなかに、 あのフェルメールが描いたとされる、「聖女プラクセデス」も含まれているのです。

美術館訪問記 No.97 はこちら

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