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美術館訪問記-93 アテネウム美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:アテネウム美術館正面

添付2:アテネウム美術館中央入口

添付3:ブラマンテ作テンピエット

添付4:アクセリ・ガッレン=カッレラ作
「アイノ神話」

添付5:ヒューゴ・シンベリ作
「傷ついた天使」 

添付6:ゴッホ作
「オーヴェルの通り」 

フィンランドの首都ヘルシンキに「アテネウム美術館」があります。

鉄道の中央駅から広い道路を隔てて直ぐの所にある重厚な建物に収まっています。

この1887年完成の建物のファサードは白い大理石の彫刻や浮彫で飾られ、 その中央入口、3階建ての2階部分に3人の芸術家の彫像が配されています。

世界の絵画、彫刻、建築を代表する人物達なのですが、誰だか判りますか?

19世紀末のフィンランドでの見解なので、これが一般的な見方とは思えませんが。

向かって左からラファエロ、フィディアス、ブラマンテなのです。

ラファエロはどなたも御存じ。

フィディアスはフェイディアス、ペイディアスとも呼ばれ、紀元前5世紀に アテネ、パルテノン神殿建設の総監督を務めたとされる彫刻家ですが、 実作は現存せず、ローマ時代の複製と言われるものが残っているだけです。

ブラマンテはイタリアのルネサンスを代表する建築家で、 ローマのサン・ピエトロ・イン・モントリオ教会の中庭にあるテンピエット、 つまり小神殿(1502年完成)で有名です。

この建物は盛期ルネサンス建築の最高傑作の呼び声が高い。

シンプルで当たり前のように見えますが、これはテンピエットが その後のあらゆるドームの基本になったからで、アメリカの国会議事堂、 ロンドンのセント・ポール大聖堂、ローマのサン・ピエトロ大聖堂等も テンピエットを参考にして建設されたと言われます。

さて美術館の展示品はというと、国立美術館だけにフィンランド人画家の作品が 大多数を占めます。ロココから始まり、ロマン派、写実派、象徴主義、印象派、 表現主義、シュルレアリスムと続くのですが、 寡聞にしてフィンランド人画家で知った名前はありませんでした。

その中で目を惹いたのがアクセリ・ガッレン=カッレラ(1835-1931)。 39点ありました。勿論最多の展示数。フィンランドの国民的画家のようで、 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ(英雄の地)」関連の絵が多い。

添付の「アイノ神話」はカレワラの挿話を三部作にしたもので、 最大の英雄ワイナミョイネンは森の中で出会った乙女アイノに求婚しますが、 アイノはそれを厭って海辺で人魚の歌を聞いた後、溺れ死んでしまいます。

ガッレン=カッレラの個人的な弟子だったヒューゴ・シンベリ(1873-1917)も 師とは異なる象徴主義的な画風で印象に残りました。

外国人画家のコレクションも近代の作品が少なからずありました。 ゴーギャン、ゴッホ、シニャック、ロートレック、アンソール、ボナール、 ドニ、ムンク、ココシュカ、ルオー、デュフィ、ピカソ、モディリアーニ等

特にゴッホの作品は彼の終焉の地、オーヴェル=シュル=オワーズで 死の2か月前に描かれたもので、その色彩と造形に見入ったものでした。

美術館訪問記 No.94 はこちら

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