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美術館訪問記-84 ビルバオ美術館

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:ビルバオ美術館、古典美術館

添付2:ビルバオ美術館、近代美術館

添付3:エル・グレコ作
「受胎告知」

添付4:スルバラン作
「聖母子とバプテスマのヨハネ」

添付5:スルバラン作
「静物」
マドリード、プラド美術館蔵

添付6:ゴーギャン作
「アルルの洗濯女達」

スペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館から300m足らずの場所に 「ビルバオ美術館」があります。

この美術館は2つの顔を持ち、道路のあるグッゲンハイム美術館に向いた姿は 赤煉瓦の古びたビルで、芝生の植えられた前庭には具象彫刻が並んでいます。

反対側に周ると3階建ての全面ガラス張りの近代的なビルで、 コンクリート床のテラスの中央に浅い小プールがセットされた構成になっています。 こちら側は広い公園に面しています。

古く見える方は1908年に設立された「古典美術館」。 新しい方は1924年設立の「近代美術館」。 両方が合体してビルバオ美術館となっています。

この美術館は素晴しかった。

バルトロメ・ベルメホ、ルイス・デ・モラレス、グレコ、リベーラ、スルバラン、 ムリーリョ、ゴヤ、ピカソ、タピエス等のスペイン人画家達だけでも 十分満足できる上に、マビューズ、ヴァン・ダイク、ヨルダーンス、 ヤコブ・ロイスダール、セザンヌ、ゴーギャン、カサット、アンソール、 ココシュカ、レジェ、フランシス・ベーコン等が加わるのですから。

フランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664)はベラスケスと同時代の画家で、 「スペインのカラヴァッジョ」とも呼ばれる激しい明暗法と写実描写で セビリアで活躍しました。

ベラスケスは宮廷画家として王侯貴族ばかりではなく、自分の身の回りの 人々も描いていますが、スルバランは教会と修道院の注文による宗教画と 静物画に特化しています。

日常を共にした修道僧達に同化したようなストイックで静謐な彼の画面は 思わず背筋を正したくなる厳粛な敬虔さを秘めています。

特に僅かにしか残っていない彼の静物画は、以後スペイン絵画の一つの特徴に なっていく、超写実とも言える精密描写で神秘的ですらあります。

彼の息子ファン・デ・スルバランは父親譲りの静物画のみを残していますが、 ペストにかかり29歳の若さで夭折しています。 妻や子供が次々と亡くなり、大衆の人気は甘美な画風のムリーリョに移って行き、 スルバランは失意と貧困の内に生涯を終えています。

スルバランの作品は残念ながら日本の美術館にはありませんが、 地元スペインばかりでなくアメリカ、フランス、ドイツ等では、 数多くの美術館で観る事ができます。 ゴーギャンの油彩画は、スペインでは、82の美術館や教会を見た限りでは、 こことマドリードのティッセン・ボルネミッサ美術館しかありませんでした。 彼がゴッホとアルルに滞在した時に描いた「アルルの洗濯女達」です。

歌川国貞の浮世絵もありました。 この他にもスペインやバスク地方出身の名前を認識していない大勢の画家や 彫刻家の作品があります。 特に近代美術館にはバスク地方の現代作家の作品が目立ちます。

スペインの地方都市にある美術館としては上位にランクされる内容です。

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