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美術館訪問記-83 グッゲンハイム美術館

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:グッゲンハイム美術館、ビルバオ

添付2:グッゲンハイム美術館入口

添付4:ルイーズ・ブルジョワ作
「ママン」

添付5:ジェフ・クーンズ作
「パピー」

スペイン、ビルバオにある「グッゲンハイム美術館」もこの美術館の存在が、 一躍ビルバオの名を世に高めた事で有名です。

ビルバオが何処に位置するのか知っている人は少ないと思いますが、 フランス国境とビスケー湾に近く、フランス南西端の町バイヨンヌから 車で1時間半程かかりました。

ここは良質の鉄鉱山を有し、工業都市として栄え、 スペイン語とは全く異なるバスク語を話すバスク地方の中心です。

町の中を蛇行して流れるビルバオ川のほとりに美術館がありますが、何故か 駐車場がなく、1km近く離れた市営地下駐車場に停め、歩く破目になりました。

美術館はまるで巨大なブリキ細工のよう。軍艦のような奇妙な形状で、 何処にも平面がなく、チタニウムの鋼板がうねり、白銀の金属色に輝いています。 アメリカの鬼才建築家、フランク・ゲーリーの設計で 脱構築主義建設の傑作といわれます。1998年開館。

建物も前衛的ですが、中味も前衛的。 常設展にはリチャード・セラ、ルイーズ・ブルジョワ、ジェニー・ホルツァー等 1990年代制作の作品が並び、我々が訪館した2007年には、 ドイツ表現主義の流れを汲む、アンセルム・キーファーとスペインの抽象画家で 彫刻家のパブロ・パラツェロの企画展を開催中でした。

リチャード・セラは1939年米国生まれで、製鉄所で働きながら、 カリフォルニア大学で英文学を学んだ後、イエール大学で絵画を専攻した 経歴の持ち主で、鉄工場での経験で鉄や鉛を使った巨大彫刻を手掛けています。

美術館横の広場には六本木ヒルズの広場にあるのと同じ、フランス人アーティスト、 ルイーズ・ブルジョア作の“ママン(母)”が高さ9mの巨大な蜘蛛の姿を 見せています。六本木で見ると周囲のビルに比べひ弱な感じがありますが、 開けた広場では腹に抱いた卵を守ろうとする母親の強さが感じられます。

具象と言える作品は、美術館前の広場に置かれたジェフ・クーンズ作の 「パピー(子犬)」だけ。

これは高さ12.4mのウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの形をした花彫刻 というようなもので、ステンレス鋼製の骨組みと内部に灌漑システムを備え、 常時種々の花々が巨大な子犬の形状に咲き誇っています。

この彫刻の除幕式の前、庭師に変装した3人組が彫刻の近くに 爆薬を仕掛けた植木鉢を置こうとして、ビルバオ警察に逮捕される事件が発生。 以降、「パピー」はビルバオ市の象徴となっているといいます。

ジェフ・クーンズは1955年の米国生まれで、子供の頃からサルヴァドール・ダリを 崇拝して育ち、大学で絵画を専攻後、絵画や彫刻を制作。

ダリに見習ってか、おそらく芸術家としては初めて イメージ・コンサルタントを雇い、自己宣伝に努め、 主だった美術誌に自分の全面広告を出したり、ポルノ女優でイタリアの 国会議員だったチョチョリーナと結婚したりして話題を集めて来ました。

今では120人以上のスタッフを抱える巨大スタジオをニューヨークに構え、 次々と作品を発表しています。添付のペットの猿、バブルスを抱いた歌手の 等身大の座像は世界最大の陶器なのだそうです。

ルネサンス期のラファエロは50人の工房を構えていたと言いますが、 それをはるかに凌駕する規模です。 2011年までのジェフ・クーンズの作品売上総額は約5億ドル(約500億円)だとか。

(*リチャード・セラ作「時間の問題」、ジェフ・クーンズ作「マイケル・ジャクソン・アンド・バブルス」は著作権上の理由により割愛しました。管理人)

美術館訪問記 No.84 はこちら

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