前回のトシオ・マルティネンゴ美術館の隣に「サンタンジェラ・メリチ教会」あり。
前のモレット広場の中央に立つモレットの記念像は1898年の作で、 パレットを左手に持って立つ高い像の足元の一段下には 絵画の偶像である女性像が坐っています。彫刻家ドメニコ・ギドーニの作。
この教会は元々、16世紀に女子の教育と病人と貧窮者の世話をするために ウルスラ修道女会を1535年にブレシアで設立した 聖アンジェラ・メリチ(1474-1540)の墓の上に建てられ、 第二次世界大戦で完全に破壊されたものを戦後再建したものです。
ファサードは平板ですが、中に入ると先ず小階段を上がって 左右の身廊に上がるようになっているのが非常に珍しい。 こんな教会は他に知りません。
内部は三廊式で、太い柱や祭壇には 戦禍を逃れて隠匿されていたフレスコ画や祭壇画が飾られています。 その筆頭が主祭壇に飾られているティントレットの「キリストの変容」。
「キリストの変容」とはマタイやマルコ、ルカの3福音書に記載されており、 マタイの福音書では全28章中の第17章に、「イエスはペトロ、ヨハネ、ヤコブの 3弟子だけを連れて高い山に登ると、旧約の預言者であるモーゼとエリヤが現れ、 白く光り輝く姿となったイエスと語り合った」とある出来事です。
自らの受難を予言し続けたキリストが、これから受ける苦難に際して 弟子たちに信仰し続ける希望を与えるために、この奇蹟を行ったとされています。
「キリストの変容」はローマのヴァティカン美術館にあるラファエロ作のものが 最も有名ですが、1520年ラファエロの死の間際まで描かれていたとされ、 例外的に主題は絵画の上半分にのみ表され、下半分には福音書の「変容」に続く 次の逸話「憑依された少年の癒し」が付け加えられた構成になっています。
これに比べティントレットの作品は変容という主題に集中しており、 ヴェネティアというローマからは距離のある土地で暮らしていたためか、 ラファエロの死の1年前に生まれたティントレットにしては、 やや古めかしい、光輪が3使徒の頭上に輝いています。
パオロ・カイリーナ・イル・ジョーヴァネの壮麗な多翼祭壇画「キリスト降架」も ありました。彼は1485年ブレシア生まれで、 偉大なる伯父ヴィンチェンツォ・フォッパの法定相続人かつ遺言執行者にもなった 画家で、ブレシアの市立サンタ・ジュリア博物館にもフレスコ画が残っています。