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美術館訪問記-77 ピカソ美術館 ヴァロリス

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:ヴァロリス「ピカソ美術館」入口

添付5:ピカソのブロンズ彫刻、「羊を抱く男」

フランス、アンティーブから少し西に行ったヴァロリスにも 「ピカソ美術館」があります。

ピカソ・シリーズの最後にこの一風変わった美術館を取り上げましょう。

というのも、ここには他のピカソ美術館と異なり、 「戦争と平和」という大壁画1点しかありません。 それも半円筒形になった礼拝堂の壁と天井、突き当りの壁に 油彩とグアッシュで描かれているのです。

ピカソは1947年から1955年にかけて南フランスのヴァロリスで暮らしました。 古くより陶器の里として知られるこの町に魅了されたピカソは、 ここで陶芸に励んだのです。

スペインで生まれ19歳の時にパリに出て来たピカソは、スペインがフランコによる 独裁政権になってからは、それに反発して祖国に戻る事はありませんでした。

壮年期をパリで過したピカソは、晩年南仏に居を構え、 死ぬまでそこで暮らしましたが、太陽と紺碧の海のある南仏は、 いずれも海に面した故郷マラガや 思春期を過ごしたバルセロナを彷彿させたのかもしれません。

この町の広場の上にはヴァロリス城があり、その城内に小さな礼拝堂がありました。 1951年、ここでこの町の陶芸家たちがピカソ70歳の誕生日を祝う宴席を催し、 そこでピカソはこの礼拝堂を壁画で荘厳する約束をしました。

翌年大壁画は完成。「戦争」と「平和」の2枚の大キャンバスと、 世界各国の平和共存を示す1枚の小キャンバスでできており、 ローマ、ミラノ、リヨン、サンパウロを巡回したピカソ展に展示後、 礼拝堂に前述のように飾られました。

壁には全く空隙がないように計算されて造られています。 一目でピカソと判る構図で、単純化され、装飾的に描かれています。

城内には隣接して3階建ての大きな館があり、こちらは1階が陶芸美術館、 2・3階が抽象画の先駆者の一人、 アルベルト・マニエッリの寄贈作品を展示する美術館になっています。

ヴァロリスの町の広場にはピカソの大きめのブロンズ彫刻、 「羊を抱く男」が置かれていました。

(*ピカソ作「戦争と平和」は著作権上の理由により割愛しました。管理人)

美術館訪問記 No.78 はこちら

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