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美術館訪問記 -738 シカゴ美術館-1、Chicago

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:シカゴ美術館本館前

添付2:シカゴ美術館前の風景

添付3:シカゴ美術館内部

添付4:ゲラルド・スタルニーナ作
「「聖母マリアの死」

添付5:マビューズ作
「聖母子」

添付6:ダフィット・テニールス (子)模写ティツィアーノ作
「ヨーロッパの略奪」

添付7:ダフィット・テニールス (子)模写ヴェロネーゼ作
「イサクの犠牲」

添付8:ダフィット・テニールス (子)作
「衛兵所」

添付9:ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作
「アルミーダと眠るリナルド」

添付10:「武器と鎧」室

次の町はシカゴ。北アメリカ屈指の国際都市で人口275万人。 ニューヨーク、ロスアンゼルスに次ぐアメリカ3位の大都市です。

その大都会の高層ビルが林立する間にあるのが「シカゴ美術館」。

メトロポリタン美術館、ボストン美術館と並ぶアメリカ3大美術館の一つなので 所有作品も多く、オールド・マスターと近代美術の2回に分けて書きましょう。

2023年秋、日曜日とあってか11時の開館20分前にもかかわらず100人近く並んで います。その割にティケット売り場に並ぶ人は少なく、直ぐ順番が来ました。

黒人の中年女性に「今日、明日2日分のティケットを買いたいのですが可能ですか。 実はここに来るのは5回目で、1日で観きれないのはよく分かっていますので」 と言ったら少し驚いていましたが、$14と言います。シニア割引でも入館料1日$26。

随分少ないのですが、彼女は微笑んでいるので、言われた通りに支払いました。 貰ったティケットは今日の分はメンバーとしてあり無料。 明日の分はシカゴ市民シニア料金で$14となっていました。 勿論彼女の好意に厚く感謝しましたが、こういうこともあるのです。

シカゴ美術館は1879年の創設で、本館の建物は、 1893年のシカゴ万国博覧会の際に建てられたものです。 その後数度にわたり増築が行われ、現在の建物は3階建ての地下1階。

収蔵品は、古代エジプト美術から現代に至る各地域、時代のものを含み、 ヨーロッパ、アメリカ合衆国などの西洋美術のみならず アジア、アフリカ、オセアニア、メソアメリカなど幅広い。

初めに正面中央から2階へ行き、202室のギャラリーから239室までが西洋美術の オールドマスター部門。名画多数の中から著名な作品は数多く出ている出版物を 見て頂くとして、それ以外の若干数を採り上げましょう。

最初は初認識した画家の「聖母マリアの死」。1410年頃の作品。

死の床にある聖母マリアの側に大勢の聖人達や天使たちが集合している絵ですが、 金地を背景にしたゴシック的絵画ながら、人物の表情や感情表現、空間表現は ルネサンス的で画風は既知の画家達とは異なり、色彩も鮮やかで瞠目しました。

画家の名はゲラルド・スタルニーナ。ヴァザーリの「芸術家列伝」に記録が 残っていますが、1360年頃フィレンツェの生まれで、1380年頃にはスペインの 宮廷で働きトレドとバレンシアで板絵やフレスコ画を制作したようです。

道理でジョット風のフィレンツェ様式とスペイン様式の混合した見慣れぬ スタイルなのでした。1404年にはフィレンツェに戻っており、 当時の画家たちに多くの影響を与えて、1413年フィレンツェで死去しています。

第5回で詳述したマビューズの出来の良い聖母子がありました。

ローマに遊学した記録のある彼のイタリア風の絵で、幼子キリストが右を向いて 祝福のポーズをとっているので、今はなき右側には対になる注文主が描かれた マビューズの生地フランドルに多かった2連式携帯祭壇画の片方なのでしょう。

第700回で説明したダフィット・テニールス (子)が ティツィアーノとヴェロネーゼの傑作を模写した作品がありました。

これらは彼のパトロンだったスペイン領ネーデルラントの支配者、 レオポルド・ヴィルヘルム大公の素晴らしいコレクションのカタログとして 小規模コピーを依頼された200点以上の作品の2点です。

このカタログは1660年出版され、販売されています。 ダフィット・テニールス (子)は、大公の学芸員としても務めたのです。

農民画や風俗画を多作した画家、テニールス(子)の例外的な意欲作がありました。

テニールスは、三十年戦争の長い紛争が終わりに近づいていた1640年代半ばに、 斬新な静物画の主題として軍事器具に目を向けました。

兵士達は衛兵所の薄暗い所でトランプをし、少年が将校のマントを持参しています。 しかし、この作品の主な主題は、サドル、マスケット銃、火薬ホーン、装填スパナ、 甲冑の籠手など、捨てられた鎧、武器、パレード用品の山です。

鎧を静物画の主題として扱うことで、テニールスは、妻の父親にあたる ヤン・ブリューゲル父の前例に倣いつつも全く新しい情景を提示してみせたのです。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの心躍るような軽快な作品もあります。 華麗で装飾的な表現と鮮やかな色彩に、目を奪われたのです。

本作は16世紀イタリアを代表する詩人トルクァート・タッソが手がけた傑作叙事詩 「解放されたエルサレム」の中の一場面で、敵対する十字軍を混乱させた 魔女アルミーダが将軍リナルドによって退けられ、その復讐として魔法で リナルドを眠らせ短剣で刺すことを試みるも、眠るリナルドの美しい姿に心奪われ、 自分の住む宮殿に誘拐してゆく場面を描いています。

ティエポロは余程この叙事詩が気に入っていたのでしょう。 この詩から採った作品を数多く観てきましたが、この絵でのリナルドとアルミーダ の甘美性漂う官能的表現は、一連の作品群の中でも秀逸の出来栄えと言えます。

この部門の最後、239号室は欧米でよくある武器と鎧に充てられていました。