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美術館訪問記 -729 公爵家博物館、Gotha

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:公爵家博物館正面

添付2:公爵家博物館内部

添付3:「平和と調和の神々」中国製1700年頃

添付4:絵画展示室

添付5:「ゴータの恋人たち」

添付6:ルーカス・クラーナハ父作
「キリストとマグダラのマリア」

添付7:ルーベンス作
「アリウスを打ち負かす聖アタナシオス」

添付8:フランス・フランケン2世作
「ソロンに自分の財宝を見せるクロイソス」

次の町はゴータ。ベルリンとフランクフルトの中間辺りにある旧東ドイツの町で 1640-1918年の間、公爵領の宮廷都市として栄え、行政、文化の中心地でした。 今日では金属加工工業の就業者が全就業者人口の4割を占め人口45000人余り。

この街の中心部の丘に公爵の居城だったフリーデンシュタイン城があり、 その城の200m程下に城と向き合うように建っているのが「公爵家博物館」。

1864年から1879年にかけて、豪華で瀟洒なネオルネサンス様式で建設された館は 東西ドイツ統合後美しく改装され、2013年博物館として開館。

コレクションはゴータ公爵の収集への情熱から生まれ、エジプトのミイラや 古代の彫刻、装飾品、金の宝飾品、中国と日本の美術品などが展示されています。

私の主たる関心の絵画も数は多くないものの観るに値するものでした。

その中で最も有名なのはドイツ絵画史上初めてカップルを描いたと言われる 「ゴータの恋人たち」。作者不詳ですがドイツ南部で1480年頃の作。

愛のしるしとして、男性は頭にバラの花輪を被り、女性はバラを持っています。 背後には古代ドイツ語で女性から「レースの冠を着けた私はあなたを愛しています」 男性の返答は「あなたの誠意に答え、あなたを幸せにします」

当時のドイツではレースを身に着けることは相手への忠誠を意味していました。

ルーカス・クラーナハ父の「キリストとマグダラのマリア」は二人をまるで カップルのように描いたもので、非常に珍しい図像です。

ルーベンスの「アリウスを打ち負かす聖アタナシオス」は説明が必要でしょう。

アリウス(256-336)とアタナシオス(298-373)は共に実在の人物です。 アリウスはイエスは被造物であるというアリウス主義を唱えた司祭で、 アタナシオスはイエスは神であって父なる神と同質であると主張した神学者。

325年、現トルコのニカイアで第1ニカイア公会議というキリスト教史における 最初の全教会規模の会議が1カ月間に渡って催され、激論の末アタナシオスの 勝利となり、この結果、三位一体というキリスト教の教義に至るのです。

フランス・フランケン2世の「ソロンに自分の財宝を見せるクロイソス」は 紀元前560年から546年まで在位したリュディア王国(現トルコ)の最後の王で 莫大な富の所有者として知られるクロイソスが、アテナイの民主主義の基礎を 築いた指導者で賢人のソロンに自らの富を誇っている場面です。

クロイソスが金持ちの自分が世界一幸福な人間だと言うと、ソロンは金より 大事なものがあるし、死ぬまで今の幸福が続くとは限らないと否定したのです。 現実はソロンの言う通り、クロイソスは後に没落しそれを思い知るのでした。

クロイソスは西欧では現在でも大金持ちの代名詞で、 日本の紀伊国屋文左衛門的な感覚で、会話や文章中にも出てきます。

フランス・フランケン2世は1581年アントワープ生まれの画家で 父のフランス・フランケン1世(1542-1616)も著名な画家で宗教画を得意として いました。フランケン家は画家の家系で父や自分の兄弟も画家になっています。

その画家一家の中での筆頭がフランス・フランケン2世で、このような歴史画や 寓意画、風俗画に加え、「美術室の絵」と呼ばれる多数の絵画のコレクションを 誇示する部屋の絵を描いた最初期の画家としても知られます。

他の画家との共作も多く彼の作品は世界中の美術館でよく見かけます。1642年没。