前回に続きフランクフルト「シュテーデル美術館」の近代美術編。
2階の近現代作品展示場の入口正面に「ローマのカンパーニャにおけるゲーテ」の 肖像画が架かっていました。子供の頃、教科書に載っていた絵です。 その時は貫禄ある壮年のゲーテというイメージでしたが、今見るとかなり若い。 それだけこちらが年取ったということなのでしょうか。
作者のヨハン・ハインリヒ・ヴィルヘルム・ティッシュバインは1751年、 ドイツ、ヘッセンの生まれで肖像画、動物画、歴史画などを得意とした画家です。
1783年ゴーダ公エルンスト2世の奨学金でローマに遊学し、1799年まで滞在します。 1786年「イタリア紀行」の旅でイタリアを訪れたゲーテと親しくなり、 1787年には共にナポリへ旅したりもしています。この絵は1787年に描かれました。
モローの「ピエタ」は近代にしては稀に見る敬虔な宗教的感情を漂わせた作品です。
聖母マリアが十字架より降ろされたキリストの亡骸を抱えてその死を嘆くという 「ピエタ」(嘆きの聖母)の主題は、本来聖書の中には記載のないものですが、 西欧カトリック美術ではルネサンス時代から好んで採り上げられて来ました。
モローは豊かな文学的素養を背景に、古典や聖書における様々なエピソードから、 根源的なテーマを浮かび上がらせ、象徴的なイメージを紡ぎ出したのでした。
モローは生活のために絵を描く必要がなかったこともあり、 同一テーマを気のすむまで何度も描き、「ピエタ」も何作もありますが、 ルノワールの「読書する少女」は彼が好んで多く描いた主題です。
大胆な荒いタッチで描かれた明るい色彩のこの絵はルノワールが 印象派の真っ只中の芸術家であることを示しています。
ゴッホの「婦人と山羊のいる農家」は1885年の作で、彼はまだオランダにいて ハーグ派の影響が強い茶系統の暗い絵が多かった時期ですが、 この絵は例外的に明るく、脱皮のための準備を始めているかのようです。
アンソールの「聖体拝領」は仮面と骸骨に囲まれて叫ぶ白塗りの少女という 彼らしい怪しげな雰囲気を漂わせた理解し難い作品で、 聖体拝領というキリスト教の祭典の祝祭ムードとはまるで矛盾しています。
動物を描き続けた画家フランツ・マルクの「雪中の犬」は、それに反して 疑問の余地のない平穏な佇まいです。動物の純粋で平和な性質を説明するために、 マルクはしばしば動物が地面に横たわって眠っている様子を描きました。
この絵ではマルクは、犬の毛皮の白い色調が、同様に白い雪に対してどのように 変化するか、および色が互いにどのように影響するかに特に興味を持っています。
フランツ・マルクと生涯の友情を結ぶ仲になり、若くして名声を確立しながら 第二次世界大戦であたら若い命を散らせたアウグスト・マッケの「二人の少女」が 日頃のマッケらしくない抽象性と具象性を混合するスタイルで目を惹きました。
二人の女の子の周りのすべてが動いています。人や物は、水晶のような幾何学的な 形に溶け込んでいます。この絵はスピードとテクニックを美化したイタリアの 未来派の芸術にマッケがどれほど影響を受けたかを示しています。
ドイツ表現主義の旗手だったキルヒナーの「イギリス人ダンサーたち」は、 マスクのような顔、単純化されたフォーム、鮮やかなフォーヴィストの色彩で 彼の確立した個性を発揮しています。
彫刻でドイツ表現主義を代表するレームブルックの「座る若者」もあります。 絵画と彫刻でドイツ表現主義を牽引した二人が共に自殺したのは残念ですが。