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美術館訪問記 -713 ノイエ・マイスター絵画館、Dresden

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ノイエ・マイスター絵画館外観

添付2:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ作
「山上の十字架」

添付3:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ作
「月を眺める二人の男」

添付4:カール・グスタフ・カルス作
「バルト海の樹木が茂った島の思い出」

添付5:ヨハン・クリスティアン・ダール作
「満月下のドレスデンの眺め」

添付6:アルノルト・ベックリン作
「夏の日」

添付7:フェルディナンド・フォン・ライスキ作
「雪中の野兎」

添付8:ゴーギャン作
「タヒチの2人の女」

添付10:ノイエ・マイスター絵画館内

次の町はドレスデン。第114回のアルテ・マイスター絵画館のある、17世紀から 19世紀にかけてザクセン王国の首都として繁栄し、エルベのフィレンツェと 讃えられた栄光の都で、今も当時の名残を留めるバロック建築が軒を連ねています。

そのアルテ・マイスター絵画館と対になるのが「ノイエ・マイスター絵画館」。

ノイエはドイツ語で「新」を意味しますが、その名のとおり、 19世紀から現代までの近現代絵画が2,500点以上所蔵されている美術館です。

1959年設立で、1965年以来アルベルティヌム美術館の2階に設置されており、 1階は彫刻美術館となっています。

ドイツでもトップクラスの近現代美術館で質の高い作品が勢揃いしています。 中でもドイツ・ロマン派のコレクションは突出しており、 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ作品は14点を数えました。

フリードリヒは1774年、ドイツ北部のグライフスヴァルトで10人兄弟の 4男として生まれましたが、7歳の時に母親を亡くし、翌年には姉のエリサベスを、 17歳の時にはもう一人の姉マリアもティフスで他界しました。

さらに、13歳の時、川でスケート遊びをしていたところ、氷が割れて溺れ、 彼を助けようとした一歳年下の弟・クリストファーが溺死してしまうのです。

フリードリヒはこの事で長年自分を責め続け、うつ病を患い、 自殺未遂を起こした事もありました。

このような、幼少時から青年期にかけての肉親の死の経験が フリードリヒの死の静寂を思わせる作品の背後にあるとも言われています。

「山上の十字架」は自然の中に神の存在をみようとしたフリードリヒの思想が、 はじめて大規模な油彩画として結実した記念すべき作品です。

「月を眺める二人の男」はフリードリヒ作品には比較的少ない人物のいる 風景画ですが、彼の描く人物は常に後ろ向きで謎めいているのです。 なおこの絵には幾つかの同工異曲の作品が存在します。

ゲーテの友人であり、一流の医師、物理学者、哲学者でありながら、仕事の傍ら、 フリードリヒの下で4年間学んだ画家でもあるカール・グスタフ・カルスの 「バルト海の樹木が茂った島の思い出」もあります。

ノルウェー人として生まれ、フリードリヒの14歳年下の親友で弟子でもあり、 ドレスデンで一つ屋根の下に二家族で住んだヨハン・クリスティアン・ダールの 「満月下のドレスデンの眺め」もドレスデンの美観をよく表しています。

スイス生まれですが、青年期以降はヨーロッパ各地を転々とし、生涯の大部分を ドイツおよびイタリアで過ごして、ドイツで絶大な人気を誇る象徴主義の画家 アルノルト・ベックリンの「夏の日」は彼らしくないアカデミックな風景画です。

日本では全く知られていないもののドイツの美術館ではよく見かける フェルディナンド・フォン・ライスキ作品は8点も展示されていました。

ライスキは1806年、ドイツ、ザクセン州の貴族の生まれで、ドレスデン美術学校で 学び、ドレスデンで生涯の大半を過ごした画家で、上流階級の人々の肖像画を 得意としましたが、歴史画,動物画,風景画も描いています。

展示中の8点の中では「雪中の野兎」が彼の確かな描写力を感じさせました。

ゴーギャンの「タヒチの2人の女」は訴求力の強い絵です。 1892年の作で、タヒチに移って間もないゴーギャンが同棲していたテフラと その友人を生き生きと色鮮やかに描き、力強い画面を創り出しています。

シャガールの「ヤギと夫婦」は人体が太い赤い縁取りで彼の作品としては 非常に珍しい。1911年作でヴィテブスクからパリに出て来たばかりで、 いろいろな技法を試していた頃なのでしょう。

館内では小学校低学年児童の美術鑑賞教育も行われていました。



(添付9:シャガール作「ヤギと夫婦」は著作権上の理由により割愛しました。
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