次の町はケムニッツ。チェコとの国境近く、ドレスデンの南西西60㎞余りの所に あり、産業革命による近代化の時代に興隆した、工業の中心地でもあります。 人口25万人足らず。
この街の中心ツェントルムにあるのが「ケムニッツ市立美術館」。
ちなみにツェントルム(Zentrum)とはドイツ語で中心という意味で、 ドイツの道路標識にはよくこの表示があり、それに従って進むと町の中心に出ます。
美術館は劇場広場を前に建つ4階建ての堂々たる建物。 市立劇場やオペラハウスが隣接して建ち並ぶ、文化芸術地区となっています。
中に入ると、大部分の展示面積がカール・シュミット=ロットルフの作品で 占められていました。彼については第522回で詳述しましたが、 ケムニッツのロットルフ村の生まれで、地元の生んだ大スターです。
カールは本名はカール・シュミット。1884年生まれ。エーリッヒ・ヘッケルと共に ケムニッツの学校に通い、建築を目指していたのですが、途中で画家志望となり、 1905年、ヘッケルやキルヒナーらと表現主義集団、ブリュッケを創立した頃に 生地ロットルフにちなんで、シュミット=ロットルフの名を名乗るようになります。
この美術館はカールの油彩画50点以上、約300点のグラフィック作品、 50点以上の手細工オブジェを所蔵しているといいます。
彼は、始めゴッホ、次いでキルヒナーの影響を受け、 黒人彫刻やキュビスムからも影響を受けています。ブリュッケのメンバー中では 抑えた、落ち着いた色彩で知られ、ドイツ表現主義を代表する作家の一人です。
シュミット=ロットルフ作品をこれだけまとめて観るのは初めてで、 正直、それまで彼にはさほど関心がなかったのですが、 俄然、興味の対象画家となりました。
彼のコーナーを離れて、別の階へ移ると、部屋の雰囲気がガラリと変わりました。
ただ一人の作家のためだけに床や壁の造りや色調を全く変えている 総合美術館というのは、世界でも恐らくここだけでしょう。
ドイツ・ロマン主義のコーナーがあり、 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの「航海中の船」がありました。
自然のなかに神の存在をみようとしたフリードリヒの絵には、無人の荒涼とした 風景を題材とした、宗教的崇高さと静寂感に満ちた作品が多い。
自然が織り成す風景に象徴的・悲劇的なドラマを見出し、 まるで宗教画に見られるような怖れや畏怖の念が表現されているように感じます。
カール・グスタフ・カルスが描いた「ドレスデンの日没」がありました。
カルスはゲーテの友人であり、一流の医師、物理学者、哲学者でありながら、 仕事の傍ら、フリードリヒの下で4年間学んだ画家でもありました。 そのためか、一見しただけではフリードリヒ作かと思わせるような絵も描きます。
他にはムンクやホドラー、ミュンター、ノルデ、フェイニンガーなどの油彩画、 彫刻ではマイヨールやロダン、ドガ、ドーミエ、レームブルックなどがありました。
この美術館は撮影禁止で添付写真は美術館のホームページから借用しました。
(添付3:シュミット=ロットルフ作「少女」、添付4:シュミット=ロットルフ作「早朝のガルテン通り」および 添付6:ヘッケル作「橋と汽車と川」 は著作権上の理由により割愛しました。
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