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美術館訪問記 -703 ナイエンハイス城、Wijhe, Zwolle

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ナイエンハイス城

添付2:ハン・ファン・メーヘレン作
「キリストと姦婦」

添付3:ナイエンハイス城内部

添付4:ディルク・ハンネマの書斎

添付5:ストスコップフ作
「皿の上の鯉のある静物」

添付6:スナイデルス作
「狩猟戦利品と茹でたロブスターのある静物」

添付10:ナイエンハイス城野外彫刻庭園

オランダ最後となるのは前回のデ・フンダーティー美術館の別館で、 ズウォレから12㎞程南のウエイヘ村にある「ナイエンハイス城」。

畑と林が続く広大な草原地帯の中に鎮座するこの城が最初に文献に登場するのは 1382年のことで、現在の城が形作られたのは1680年という古城です。

最後に城の持ち主だったのは前回名前を出したディルク・ハンネマで ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の館長を務めた人物です。 ハンネマは1921年、僅か26歳で同館館長に任命されていました。

彼は1958年から死亡する1984年までこの城に居住していましたが、 土地や城に併せて自分の膨大な美術コレクションごと彼が設立した ハンネマ=デ・ストルアス財団に寄贈していました。デ・フンダーティー美術館も この財団の持ち物で、一部はこの一帯を管轄している州の所管になっています。

デ・フンダーティー美術館の別館とはいえ、展示面積はこちらの方が広く、 興味深い作品も多く展示されています。ただ車でしか来られないことも起因して いるのでしょうが、日本語のインターネット上での検索結果は皆無でした。

ディルク・ハンネマは両親が富裕だったこともあり、若年時から美術収集を 開始していますが、個人でこれだけのコレクションを形成したのは驚きです。 これら以外にもボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館にも 個人的に数多くの作品を寄贈しているのですから、なおさらです。

ハン・ファン・メーヘレンのフェルメールの贋作で味噌をつけたのは気の毒ですが、 近所付き合いがあり彼の幼年時から美術の師と仰いだアブラハム・ブレディウスの お墨付きに基づいての判断だったのですから、同情の余地は大いにあります。

この城にもハンネマ自身がフェルメール作と信じて購入したメーヘレン作の 「キリストと姦婦」が展示されていました。

内部は昔からの居城らしく、狭い部屋が数多くあり、導線も複雑ですが、 ディルク・ハンネマが使用していた立派な書斎も残されていました。

この城の最大の見ものはストスコップフの「皿の上の鯉のある静物」。 彼の作品はどれもまるで封印された時間を紐解くような、重厚な存在感、 永遠不変の時の流れ、悠久性を感じさせてくれます。

静物画と言えば、静物画家から転じて最初期の専門の動物画家として活躍した フランス・スナイデルスの「狩猟戦利品と茹でたロブスターのある静物」が 彼の両方の専門性を生かした絵画として面白い。

オランダ近代絵画を代表する画家ヤン・スライテルスの作品は5点ありましたが、 その中から「窓敷居の上の花々」を添付しましょう。

展示作品数で最も多かったのはパウル・シトロエンの15点。

パウル・シトロエンは1896年、ベルリン生まれのユダヤ系オランダ人で、 1919年に創立されたばかりのバウハウスでパウル・クレーやカンディンスキーの 下で学び、卒業後は絵画や写真、オランダの切手のデザインなどで有名になります。

1933年にはアムステルダムにバウハウスと同様な教育を行うことを目指した ニューアート・アカデミーを共同創設者として立ち上げますが、4年で閉鎖。

1937年からはハーグの美術学校教師として多くの生徒を育てています。 1942年にはナチスのユダヤ人迫害を避けて友人宅のシェルターで一時隠蔽生活を 強いられています。1960年に退任し、その後は数多くの肖像画を描いて 暮らしました。1983年ハーグ郊外のヴァッセナールで死去。

ズウォレが州都であるオランダの州オーバーアイセルの議員がシトロエンの親友で、 彼の推薦で同州は1973年から1975年にかけてパウル・シトロエン作品を 2000点以上も購入し、その一部がこの城に展示されているのでした。

なおコリー・ミューレンフェルトはハーグ美術学校でシトロエンの生徒でした。

この城には現代彫刻専門の野外彫刻庭園も付属しています。展示されている彫刻は ディルク・ハンネマの収集品に財団購入品が付け加えられたものです。



(添付7:ヤン・スライテルス作「窓敷居の上の花々」、添付8:パウル・シトロエン作「18歳の自画像」1914年 および 添付9:パウル・シトロエン作「コリー・ミューレンフェルトの肖像」1939年は著作権上の理由により割愛しました。
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