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美術館訪問記-69 地中海近代美術館

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:グリマルディ城

添付2:グリマルディ城塔頂からの眺め

添付4:キスリング作
「シュジー・ソリドール」

添付8:グリマルディ城周辺に置かれたスーティンの複製風景画

カーニュ・シュル・メールのルノワール美術館は丘の上にありますが、 谷を隔てたその向いにも同じくらいの高さの丘があり、 その頂上に立派な城が築かれているのが見えます。 その名はグリマルディ城。

1309年の建造とかで、3階建ての堅固な城です。 幾多の変遷を経て、現在は市の持ち物。 3階の上に更に2階建の塔が載っており、この塔頂からの眺めが素晴らしい。 元々小高い丘の上にあるのに加え、360°遮るものがない。

この城全体が博物館になっており、その中に「地中海近代美術館」が入っています。 ここにはシャガールや藤田嗣治のような コート・ダジュールを愛した画家達の絵が展示されています。

ここで驚いたのは2階の1部屋。 女性の肖像画が四方の壁に隙間なく並んでいます。その数52点。 何とこれらが全て同一女性を描いたもの。

画家は全て異なり、キスリング、ドンゲン、デュフィ、ローランサン、 コクトー、レンピッカ、藤田嗣治と一流どころが並びます。 ここにはありませんがピカソやブラック、スーラも彼女を描いたといいます。

その女性の名はシュジー・ソリドール(1900-1983)。

フランス、ブルターニュの生まれで、1920年代にパリに出、 1930年頃には売れっ子の歌手になっており、 洗練されたナイトクラブをオープンするまでになりました。

彼女は自分の肖像画を壁に並べて歌う事で売り出し、 張り出す肖像画の数を次々と増やしていきました。

やがて彼女を描く事が画家の証のようになり、無料で描かれた肖像画も多いという。 描かれた肖像画の総数は226点。 世界で最も描かれた女性と言えるでしょう。

1960年にはカーニュ・シュル・メールに移り、そこで骨董店とナイトクラブを経営。 1967年に引退し、肖像画の内40点を美術館に寄贈。 1983年死去の後、残されたポートレートは競売により散逸。 幾つかは地中海近代美術館の手に渡ったようです。

グリマルディ城の周辺にはアンドレ・ドランとスーティンの描いた この辺りの風景画の複製看板が置いてありました。


(*藤田嗣治作品、 ドンゲン作「シュジー・ソリドール」、タマラ・ド・レンピッカ作「シュジー・ソリドール」は著作権上の理由により割愛しました。管理人)

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