次の町はルーヴェン。ブリュッセルの東25㎞程にある人口10万人余りの古都です。この町の中心近くに「ルーヴェン博物館」があります。
1917年から市立博物館として使用されていた新古典主義様式の建物に増築して2009年現在の姿となって開館。5万点以上の所蔵品を誇っています。
ここで初認識したのがヤン・ロンバウツ。詳細は不明ですが、1480年頃ルーヴェンで生まれた画家、版画家、ステンドグラスデザイナーで、1519年から死亡する1535年までルーヴェン市役所の学芸部長を務めた人物です。
この博物館にある4点の作品とアメリカのカーネギー美術館にある1点のみが現在、油彩画として残された彼の真筆とされています。
フランドルの伝統に基づく細密描写、活気に満ちた豊かな色使い、複雑な構図、巧みな群像表現、ルネサンス的建築挿入など、北方ルネサンスの重要な画家の一人であることは間違いありません。
ここにあるのは多翼祭壇画の両翼を飾っていたと想定される、いずれも中央部分は不明の4作品です。
「使徒ペテロの解放」はヘロデ王によって使徒たちが迫害を受けていた時代、捕らえられて投獄されたペテロが鎖につながれ、眠っていると、輝く光のなかに天使が現れ、彼に起きるようにと告げます。ペテロは天使に導かれ、誰にも気付かれずに獄を出て、無事に逃れることができるのです。
「アンティオキアのマルガリタ」は伝説上の人物で、異教徒からの求婚を断り、キリスト教信者として捕らわれた牢獄で悪魔の化身のドラゴンに襲われるのですが持っていた十字架でこれを撃退したと言われます。
「シモン・マグスの墜落」は多くの信者を持つ魔術師だったシモン・マグスが、魔術によって空中を浮揚し聖ペテロに襲い掛かったのですが、ペテロが神に祈りを捧げると忽ち墜落し落命したとされるお話です。
「パウロの回心」はイエスの信徒を迫害していたパウロが、キリストの死後、馬に乗り、キリスト教徒捕縛へ向かう途中突然天から「パウロ、パウロ、なぜわたしを迫害するのか」というイエスの声を聞き、地面に倒れたといいます。
この復活したイエスとの出会いによって、何が信ずべき道であるのかを悟り、回心してキリスト教徒となり、キリスト教発展の基礎を作ったパウロでした。
ヤン・ロンバウツがデザインしたステンドグラスがメトロポリタン美術館に幾つか所蔵されているのでその一つを添付しましょう。
ヤン・ロンバウツの生まれる前にルーヴェンで重きをなしたディルク・バウツの「悲しみの人」がありました。荊冠のキリストは当時好まれた主題だったようで。工房作も含まれるのでしょうが、同様の作品が多く存在しています。
ヤン・ロンバウツと同時期にアントワープで活躍したフランドルの画家ヨース・ファン・クレーフェの「聖母子」もあります。
アントワープ出身でフランドルの雄、アンソニー・ヴァン・ダイクの「聖ヒエロニムスと天使」や第666回で詳述したコンスタン・ムーニエの彫刻「精錬工」なども目につきました。
ルーヴェンの旧家の一室をそのまま移築した豪華な一部屋もありました。