前回のカルメン婦人病院から150mも行かない場所にあるのが「サン・フェリペ・ネリ礼拝堂」。
1685年から1719年にかけてバロック様式で建てられた礼拝堂で、1755年にカディスを襲った津波で被害に会い、拡大改築されています。
フランス支配下の1812年、唯一の非占領地だったカディスに召集された国民議会がここで開かれ、スペイン初の憲法が発布された記念すべき場所です。
スペインによく見られる狭い通りに面して入口があり、中に入ると、思いの外広く、楕円形のドームと7つの礼拝堂がありました。
中央祭壇上部にムリーリョの最高傑作と言われる「無原罪の御宿り」があります。
「無原罪の御宿り」とは、聖母マリアが無原罪(つまり情交なしに)でキリストを身ごもったと解釈されている人が多いのですが、前にも書きましたが、それは間違いで、マリア自身が、その母である聖アンナの胎内に無原罪で懐胎したという信仰です。
この事がローマ教皇から教義として正式に認定されたのは1854年だったのですが、無原罪信仰そのものはマリア崇拝とともに極めて古くからあり、特にスペインでは熱烈に信仰され、歴代教皇に教義としての認可を迫っていました。
1661年に教皇アレクサンドル7世がこの信仰を公式に認定し、以後異論を唱える事を禁止する事を発布した時には、スペインでも擁護派の筆頭だったセビーリャで盛大な祝祭行事が挙行されました。
本作では、静かに祈りながら地上へと降りてくる聖母マリアの誕生と聖性を象徴化し、表現しています。
「無原罪の御宿り」では、頭上に星の冠が共通の項目として描かれることが多いのですが、これは、「新約聖書」における最後の書「ヨハネの黙示録」の一節が基になっています。
「天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた」(黙示録12・1)。
この黙示録の記述に従い、「無原罪の御宿り」では頭には12個の星の冠が描かれています。
この絵では、マリアの出現を祝福する天使達の中に、マリアの純潔を象徴する百合の花と、実りの象徴の稲穂を持つ天使達も描かれています。
中央祭壇に向かって左側の礼拝堂には美麗な彫刻と天井装飾で飾られたキリストの磔刑彫刻もありました。