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美術館訪問記 - 642 カタルーニャ国立美術館、Barcelona

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:カタルーニャ国立美術館正面

添付2:カタルーニャ国立美術館前からの眺め

添付3:旧サン・クリメンテ教会所蔵「全能のキリスト」

添付4:ルイス・ダルマウ作
「バルセロナ市顧問団祭壇画」

添付5:ヤン・ファン・エイク作
「ゲントの祭壇画」 聖バーフ大聖堂蔵

添付6:ハウメ・ウゲット作
「聖アウグスティヌスの聖別式」

添付7:アイネ・ブル作
「聖カンディダス」

添付8:グレコ作
「聖ペテロと聖パウロ」

添付9:ラモン・カサス作
「自転車乗り達」

添付10:カタリューナ国立美術館内部

第273回のミロ美術館のあるムンジュイックの丘の中央付近にあるのが 「カタルーニャ国立美術館」。

下のスペイン広場から見上げると、まるで国会議事堂かローマ時代の宮殿の趣。 威厳と風情のある建物です。

実際は1929年の万国博用に建造し、1934年に改造して美術館になった建物ですが、 高台にあるため、階段と野外エスカレーター併用で、結構登らされます。 その分、美術館前からの見晴らしは抜群でバルセロナ市内が一望できます。

バルセロナのあるカタルーニャ地方は、11-13世紀にかけて、イタリアと ビザンティンの影響のもとにロマネスク美術が栄えたことで知られています。

この美術館は歴史あるカタルーニャ美術を総合展示する美術館として、 また、1990年には、それまで別の場所にあったカタルーニャ近代美術館所蔵の カタルーニャ美術の近代絵画のコレクションが統合され、 以来、カタルーニャ美術の総合美術館として機能し続けています。

入って1階左手がロマネスク部門。

小さな村々の教会にあったフレスコ壁画を移築したロマネスク美術展示は、 教会の構造をそのまま再現して、本来あったように展示しているので、 まるでその場にいるかのような錯覚を与え、ユニークで素晴しい。

11世紀から、スペインに力強い絵画の伝統があったことがよく判ります。 稚気のある、伸び伸びとした、こだわりのない絵が続きます。

なかでもタウール村のサン・クリメンテ教会の「全能のキリスト」は最高。 おおらかで、ほがらかな全能の神が、全てを許すかのように微笑んでいます。 年代を追っての変遷が面白い。

右側がゴシック・ルネサンス・バロック美術と、2004年にペトラルベス修道院から 移されたティッセン=ボルネミッサ・コレクションの展示になっていました。

後者の解説は次回にする事にして、ゴシックの部屋には金地の祭壇画が並びます。 イタリア人画家の作品も多く、この頃から交流の多かったことが判ります。

順に観て行くと、少し広い部屋に出ました。 国際ゴシックの特徴的な顔立ちが、突如人間らしくなりました。

最初に目を惹いたのはルイス・ダルマウ。1428年から1461年まで活動記録のある、 アラゴン王国アルフォンソ 5世の宮廷画家です。

1428年から29年にかけてリスボンへ旅したヤン・ファン・エイクと会っており、 1431年から1436年までヤンのいたブリュージュへ旅行し、ヤンの手助けをして、 制作中だった「ゲントの祭壇画」などヤン作品から多くを吸収しています。

彼の「バルセロナ市顧問団祭壇画」の顧問団の後ろで歌っている天使たちは ゲントの祭壇画からの借用ですし、画面右手の十字架を担ぐ髭面の聖人は、 ゲントの祭壇画の洗礼者ヨハネとそっくり。

続いてハウメ・ウゲットの作品群。前回名前を出しましたが、 彼は1412年バルセロナの西、バルスの生まれで、画家の叔父の下で修業し、 1448年にバルセロナで工房を開いた時には既に第一人者として、ダルマウ亡き後は カタルーニャ地方の祭壇画需要を一手に引き受ける巨匠となっていました。

初期にはイタリア絵画の影響が見られますが、 ほどなくフランドルの細密描写と伝統的なカタルーニャの国際ゴシック様式を 融合させた独自のスタイルを貫くようになります。

まだ金地は多用していますが、人体や衣服は写実的で細密に描かれ、立体的。 スペイン初の巨匠と言えるでしょう。ここには25作品もあります。1492年没。

ルネサンス美術のコーナーにあった、 アイネ・ブルという画家の「聖カンディダス」という絵も心惹かれました。

眉目秀麗な若者がフランドル伝統の細微に描かれた衣装・甲冑を纏い、 印象的な表情でこちらを見つめている絵です。

アイネ・ブルは他にもう一作しか知られていない画家で、 ドイツかオランダの生まれで、16世紀初にはカタルーニャ地方にいたようです。

聖カンディダスは第591回で詳述した聖モーリス麾下のテーベ軍の隊長の一人で、 西暦287年、聖モーリスらと共に殉教しています。

他にも著名な画家の作品が盛り沢山あるなか、グレコを1点だけ添付しておきます。

2階は近代美術展示室になっていました。

ピカソ11点やムンク、ブーダン、ダリ、タピエス等が所々に点在する以外は あまり聞いたことのない近代のスペイン画家が占めています。

その中から、バルセロナ生まれで風刺画や上流階級の人々の肖像画で知られる、 ラモン・カサスの「自転車乗り達」を添付しましょう。

歩いていると美術館とは場違いな感じの巨大な体育館のような場所に出ました。 イベントなどが開催されるのでしょうか。立派なパイプオルガンもあり、 コンサートも催される多目的ホールになっているようです。