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美術館訪問記-62 聖母教会(ブルージュ)

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:聖母教会正面

添付2:ミケランジェロ作
「聖母子像」

添付3:ミケランジェロ作
「ピエタ」
ヴァティカン、サン・ピエトロ大聖堂蔵

添付4:カラヴァッジョ作
「エマオの晩餐」
ロンドン、ナショナル・ギャラリー蔵

添付5:聖母教会前の橋から見た風景

添付6:メムリンク美術館正面

前回61回目にして初めて彫刻家を取り上げましたが、 彫刻家といえば、神の手を持つと言われたミケランジェロ。

それでは、ヴァティカンを含むイタリア国外の何箇所に ミケランジェロの彫刻の完成作があるかご存知ですか?

世界でも3箇所しかありません。 まずルーヴルとエルミタージュ。ここまでは、さもありなんと思われるでしょう。

では残る1つは?

ベルギー、ブルージュの「聖母教会」にあるのです。

フランドルの水の都、ブルージュ。 ブルージュ(Brugge)とは橋の意味で、 運河の張り巡らされた街には50以上の橋がかかっています。

街の中心にある橋の前に聖母教会があります。 高さ122mの塔は独特な形をしており、上部の橙色もエレガント。 この高さは勿論ブルージュでは最高で、 レンガ造りとしては世界でも2番目の高さだとか。

教会は13世紀から15世紀にかけての建立で、 その後何度も改修され、さまざまな建築様式が混じっています。

内部に入ると、右手奥の祭壇の中央にミケランジェロ作の聖母子像があります。 高さ128cm。座っている聖母の両足の間に、幼児と言うには少し大きくなった キリストが、左膝に寄りかかりながら裸で立って、瞑目している。

マリアも伏し目がちに、やや左膝側のキリストとは反対の右側に顔を向け、 静かに瞑想しているかのよう。 1501−1505年頃の作。ミケランジェロ26−30歳の時で、 ヴァティカンのピエタのマリア像に似通う、静謐な中に気品を湛える名作。

どうしてこんなものがこんな所にと思ったら、ベルギー商人の兄弟が イタリア旅行中に購入して、1514年、聖母教会に寄進したのだとか。

その後1794年フランス、1944年ナチス・ドイツによる 2度の略奪の洗礼を受けながらも、生き残ってきているといいます。

左上部の壁に、昔はカラヴァッジョの作とされていた 「エマオの晩餐」がかかっていました。

聖母教会の斜め前には第58回で採り上げた メムリンクの主要作品を展示しているメムリンク美術館があります。

注 :

エマオの晩餐:エマオはエルサレムから11km北西にある町で、キリストの弟子クレオパがもう一人の弟子とエマオに向かう途中に出会った旅人を、そこで食事に招待し、その旅人が最後の晩餐で初めて行ったようにパンを祝福した瞬間、二人は彼が復活したキリストと気付き驚愕する場面。キリストはこの直後に消える。

美術館訪問記 No.63 はこちら

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