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美術館訪問記 - 557 チェゼーナ・リスパルミオ美術館、Cesena

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:チェゼーナのリベルタ広場

添付2:チェゼーナ・リスパルミオ美術館の入居している建物

添付3:ソドマ作
「聖家族と洗礼者ヨハネ」

添付4:マルコ・パルメッツァーノ作
「聖母子と洗礼者ヨハネ、聖フィリッポ・ベニッツィ」

添付5:マルコ・パルメッツァーノ作
「十字架を運ぶキリストと悪党」

添付6:マルコ・パルメッツァーノ作
「聖母子像」

添付7:プロスペロー・フォンターナ作
「聖カタリナの秘密の婚約」

前回「世の中、捨てたものではありません」と書きましたが、 この時の旅では、前日にもそう感じたことがありました。

第33回で触れたラヴェンナの30㎞程南にチェゼーナという古都があります。

古代ローマ以来の歴史を持つ街で、ルネサンス期にはマラテスタ家のもとで繁栄。 ヨーロッパ最古の市民図書館とされるマラテスティアーナ図書館が開設され、 18世紀から19世紀にかけて3人の教皇を輩出している由緒ある都市です。

この街の中心、リベルタ広場に面してある 「チェゼーナ・リスパルミオ美術館」に行くと開館時間なのに閉まっています。

この美術館は銀行の所有物で、1876年建築の3階建ての立派な銀行の建物の中に 入っているので、銀行の守衛室に行くと壮年の屈強な男が座っています。

どうなっているのか聞くと、何処かに電話して、 今日は休みで明日は開館すると言います。

「とんでもない、今日だけしかここにはいられない。本来開館している筈で、 ここにあるソドマの絵のために日本から来たのに」と言うと、 何やら電話をかけまくっていましたが、やがて、自分が案内すると言います。

一緒にエレベーターで3階に上がり、閉まっていた扉の鍵を開け、 電源も全て自分で入れ、こちらが見物している間、心配そうに付いて回ります。

展示品が素晴らしかったので、そう言うと、実に嬉しそうな顔をしました。 最後に握手して、丁寧に礼を言いましたが、心温まる出来事でした。

展示されていたソドマの「聖家族と洗礼者ヨハネ」は期待通りの傑作でした。

この美術館で新たに認識したのは3作あったマルコ・パルメッツァーノ。

チェゼーナの北西20㎞足らずの古都フォルリで生没しており、 フォルリ派の中核と言えます。1460年頃の生まれ。

第98回で紹介したメロッツォ・ダ・フォルリに師事し、 師の死亡した1494年から95年にかけて、ローマからヴェネツィアを旅して ジョヴァンニ・ベッリーニとチーマ・ダ・コネリアーノの強い影響を受け、 その画風を死ぬ1539年まで維持しました。

ヴェネツィアからフォルリに戻ると、自分の工房を構え、 仕事でエミリア・ロマーニャ各地やロレートに旅した以外は 死ぬまでフォルリに留まりました。

ジョヴァンニ・ベッリーニとチーマ・ダ・コネリアーノを融合したような、 豊かで明るい色彩と端正でバランスのとれた構図が素晴らしい。 彼の宗教画の背景となる風景はリアルで真実味が感じられます。

第171回で触れたルネサンス期の自立した女流画家ラヴィニア・フォンターナの 父親で、ボローニャ派初期の代表的画家だったプロスペロー・フォンターナ作 「聖カタリナの秘密の婚約」も佳品でした。