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美術館訪問記 - 546 トリニティ教会、Boston

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ジョン・ハンコック・タワーを後ろにしたトリニティ教会

添付2:トリニティ教会正面

添付3:トリニティ教会内部パノラマ図
写真:Creative Commons

添付4:トリニティ教会内部壁画

添付5:ジョン・ラファージ作
「荘厳のキリスト」

添付6:ジョン・ラファージ作
「マリアの神殿奉献」

添付7:バーン・ジョーンズ下絵
「ダビデのソロモンへの訓戒」

添付8:バーン・ジョーンズ下絵
「エジプトへの逃避」

ボストンの中心部に「トリニティ教会」があります。

「三位一体」を意味するトリニティを名乗る教会は世界中にあり、三位一体とは、キリスト教において、父なる神、神の子キリスト、聖霊の三つが一体の唯一神であるという教義です。

1976年の完成以来ニューイングランド地方最大の高さを誇る、最初のガラス張りの超高層ビル、ジョン・ハンコック・タワーを真後ろに、この教会が屹立する姿は新旧の対照的取り合わせとして一幅の絵となっています。

1872年のボストン大火で教会が焼けた後、現在の教会建物はヘンリー・リチャードソンによって設計され、建設は1872年に始まり、1877年に献堂されています。

リチャードソンは1838年ルイジアナ州の生まれで、ハーヴァード大学で建築を学んだ後、1860年パリの国立美術学校に入り、5年間滞在。この間、南フランスに多いロマネスク様式に多大な影響を受けて帰国。

この教会は後に「リチャードソン・ロマネスク様式」と呼ばれる程の代表作になり、彼はアメリカ建築界の第一人者として、1885年アメリカ建築家協会が選んだ「アメリカ建築10傑」の内5件を彼が獲得するという大活躍をみせます。

この教会は勿論その10傑の中の一つですし、10傑中唯一の教会でもあります。

外観は荒い花崗岩と褐色の砂岩によるモザイク模様で、重厚で美しいデザインです。正面に据えられた塔は、スペインのサラマンカ大聖堂からヒントを得たもの。

ここは教会としては珍しく地下の売店で一人10ドル払って入ります。日本の観光地の寺社では当然のように入場料を設けていますが、欧米では数少ない。

教会の中に入ると、ほの暗くひんやりとしていて厳粛な雰囲気が漂っています。目に留まるのが数々の美しいステンドグラスと大きな壁画。

この壁画を制作したのがジョン・ラファージ。彼は壁画はこれが初めてでしたが、これにより名声を確立し、その後多くの壁画を手掛けることになりました。

ラファージは1835年、ニューヨークの裕福なフランス人家庭に生まれ、法律を履修後、1856年渡欧。パリでは画家の個人教授を受け、ロンドンではラファエル前派から学んで翌年帰国。画家として暮らし始めます。

葛飾北斎の浮世絵に興味を持ち、1870年、日本美術に関するエッセーを出版。これは英文で書かれた初の日本美術紹介文でした。

1886年には来日し、岡倉天心やフェノロサらと交わり、ボストン美術館の中国・日本美術部長となった岡倉とはアメリカでも交友しています。1910年病没。

ラファージは壁画や絵画だけでなく、ステンドグラスでもアメリカでは草分け的存在で、独自の技術を開発し、1870年代にそれらの技術をルイス・ティファニーに伝授したりもしています。

この教会にも彼のステンドグラスが4点ありました。ニューヨーク大聖堂を始め全米の少なくとも34か所にラファージ制作のステンドグラスが残っています。

期待したバーン・ジョーンズのデザイン、ウィリアム・モリス制作(1882年)のステンドグラスは、同じく4点ありました。

約7000本のパイプがあるというパイプオルガンもありました。