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美術館訪問記 - 529 ベニントン美術館、Bennington

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付5:1969年アメリカ発行の郵便切手

添付6:ベニントン美術館正面

添付7:カール・マーティン製作の乗用車

前回3人の素朴派の画家たちを紹介しましたが、彼らはいずれもフランス人男性。では他の国の画家や女性はいないのか。

勿論います。その代表が前回添付したグランマ・モーゼス。

彼女は1860年、アメリカ、ニューヨーク州の生まれ。本名アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス。

12歳から農場で働き、27歳で同じ農場で働いていたトーマス・サーモンと結婚。67歳で夫を亡くし、ヴァーモント州ベニントンへ移り住み、趣味で刺繍絵を作り始めます。

リュウマチで手が動き難くなってからリハビリをかねて75歳より本格的に絵を描き始めます。当初彼女は自分の描いた絵を自家製のジャムなどと一緒にドラッグストアに並べて出していました。

1938年、美術コレクターのコルダーが彼女の才能を見抜き、店の品だけでなく、自宅を訪ねて全作品を買い取ります。

1940年には80歳にして初めての個展がニューヨークで開かれ、この個展に大手デパートが注目して一躍有名画家となるのです。

人気画家グランマ・モーゼスの誕生の瞬間です。89歳の時には当時の大統領トルーマンによってホワイトハウスに招待されるほどでした。

モーゼスの描いた世界は、現実の風景を見て描いたものではありませんでした。収集していた昔の新聞写真の切り抜きや、農機具などの写真やイラスト資料などを記憶の助けとして、失われていった懐かしくも美しい昔の風景をキャンバスの上に再現していったのです。

素朴派の画家たちは見て描くのではなく記憶の中から描くと言われます。彼女は101歳で亡くなるまで描き続けました。

1969年には彼女の描いた絵がアメリカの郵便切手になっています。

75歳から画家の人生をスタートしたモーゼスの生涯は、「さあ、何かを始めてごらん、誰にだって、いくつになったって、どこにいたってチャンスはあるのだから」と語りかけているかのようです。

そのモーゼスの作品が最も多く観られるのが、彼女が晩年を過ごしたアメリカ合衆国ヴァーモント州ベニントンにある「ベニントン美術館」。

付近に産する石造りで、元は聖フランシスコ教会だったこの美術館には、モーゼスの油彩画41点、刺繍画2点と彼女の遺品や子孫の画家達の作品が展示されていました。

さらに、この地方に関連するフォークアートや、陶器類、ガラス製品、歴史的記念品等も多数展示してあります。カール・マーティンがヴァーモント州で製作した20台の内の1台という1924年製の巨大な乗用車もありました。



(添付1:グランマ・モーゼス作「古いチェックガラの家」1944年、添付2:グランマ・モーゼス作「ベニントン」1945年、添付3:グランマ・モーゼス作「田舎の結婚式」1951年 および 添付4:グランマ・モーゼス作「七面鳥を追っかける」1955年 は著作権上の理由により割愛しました。
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