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美術館訪問記 - 524 ブーフハイム美術館、Bernried am Starnberger Se

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ブーフハイム美術館外観

添付2:ブーフハイム美術館バルコニーからの眺め

添付4:ブーフハイムの人形コレクション

添付5:ブーフハイム美術館主展示室

添付7:キルヒナー作
「山の景色」

添付8:エミール・ノルデ作
「アラブ人」

添付9:クリムト作
「鬼火」 個人蔵

添付10:クリムト作
「姉妹」 クリムト財団蔵

ミュンヘンの南西35㎞程にある町ベルンリート・アム・シュタルンベルガー・ゼーには「ブーフハイム美術館」があります。

この小さな町の長い町名はドイツにあるチェコ国境近くの町ベルンリートと区別するためのもので、アム・シュタルンベルガー・ゼーとはシュタルンベルク湖傍のという意味のドイツ語です。

シュタルンベルク湖はルートヴィヒ2世が水死したことで知られていますが、風光明媚でミュンヘンからの交通アクセスも良く、週末は多くの人で賑わいます。

美術館はその湖畔にあり、駐車場からなだらかな坂道を下った場所にありました。

途中は芝生で、所々に本物のヘリコプターに彩色したものや、椅子に腰かけた老夫婦、抽象彫刻などのオブジェが散在しており、広い公園のようになっていました。

ドイツ人建築家、ギュンター・ベーニッシュが設計した建物は、外観は周囲の自然に溶け込むような、そして内部は光あふれる落ち着いた空間。

広々とした湖を見渡せる広いバルコニーの床は木製で、屋根は植物が植えられたルーフガーデンになっています。

この美術館の創設者ロータル=ギュンター・ブーフハイムは、幼少の頃から画才を発揮し、第二次世界大戦中は、ドイツ海軍報道部隊の報道画家として採用され、フランス大西洋岸地域の部隊に配属されました。

Uボートなどの艦艇に搭乗取材するなどして多数の記事や写真を発表し、戦後は美術出版社「ブーフハイム出版」を経営し、ベックマンやピカソの作品集を刊行、絵画コレクターとしても著名でした。

あの有名な映画「Uボート」は彼の作品が原作。その撮影中の登場人物達のブーフハイムのスケッチ画が飾っている部屋もありました。

彼が諸外国旅行で収集したアジア美術、アフリカ美術の仏像や人形、装飾品などを展示する部屋もあります。

広い主展示室は入口から見ると地階、公園側から見ると1階にあり、ブーフハイムの集めたドイツ表現主義の画家達の大きな作品が数多く並び壮観。

特にブルッケ・メンバーの作品が多く、ブーフハイムはキルヒナーに心酔していたようで前々回紹介したキルヒナーの「マルツェッラ」を模写した作品もありました。

キルヒナーの作品は11点も展示されていましたが、中では「山の景色」と題された絵が600 x 210cmという、キルヒナーの油彩画では初めて目にした巨大さで驚きました。

エミール・ノルデの「アラブ人」も彼のテーマとしては初めて観る絵です。

私が訪れた2016年には「クリムトと日本の春画」と題した企画展も開催中で葛飾北斎を含む春画多数とクリムトの素描が展示されていました。

観たことのない個人蔵のクリムトの油彩画を含む2点もありました。クリムトの作品は世界32箇所の美術館でしか観られないので、何だか予期せぬ贈り物を貰ったような豊かな気持ちになりました。



(添付3:ブーフハイム作「橋の上のUボート司令官」 および 添付6:ブーフハイム作「キルヒナー作マルツェッラ模写」は著作権上の理由により割愛しました。
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