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美術館訪問記-52 コンデ美術館

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:ピエロ・ディ・コジモ作
「シモネッタ・ヴェスプッチの肖像」

添付2:コンデ美術館正面

添付3:コンデ美術館前の犬の彫刻

添付4:コンデ美術館内部

添付5:ジャン・フーケ作
「エティエンヌ・シュヴァリエの祈祷書」

添付6:ラファエロ作
「聖母子像」

添付7:アングル作
「画家の肖像」

ピエロ・ディ・コジモ(1462-1521)はイタリア、フィレンツェの画家で、 本名ピエロ・ディ・ロレンツォ。
コジモ・ロッセリが師匠だったので通称こう呼ばれています。 特異な画風で、神話や宗教を題材に幻想的な絵を多く描きました。

ピエロ・ディ・コジモと聞いて一番に思い浮かべるのは 「シモネッタ・ヴェスプッチの肖像」です。 シモネッタは当時絶世の美女として知られ、何人もの芸術家の題材になっています。 第49回にもボッティチェッリの描いた同主題の絵を掲載しました。

ピエロのシモネッタは半裸のプロファイルで首飾りには蛇が巻き付き、 奇抜な髪形で彼の作風通り特異な肖像画です。 一目見たら忘れられない。

この絵があるのはフランス、シャンティイにある「コンデ美術館」。 シャンティイはパリから北に30km足らずの所で、 緑に囲まれた平原の中に、優雅に佇むルネサンス風のシャンティイ城があります。

この城は長い歴史を経て、フランス最後の王ルイ・フィリップの5番目の息子、 オマール公により全面的に改築され今の姿になったのです。

2月革命後イギリスへの亡命を余儀なくされていた彼は1871年帰国。 長い亡命生活の間に精力的に収集した美術品の展示場も兼ね、 この城を再建したのです。

門の前の2匹の巨大な犬の彫刻がもののあわれを体現しているようで、 この城の主人だった人の洗練と人生への理解を窺わせます。

1880年代に入り、時代の流れがオマール公に城と領土、 美術品をフランス学士院へ寄贈することを余儀なくさせます。 その時公は「展示品の配置を変えない」、 「貸し出さない」の2つを約束させたのです。

従ってここでは1880年頃の展示方法のままの姿で作品を鑑賞するという、 博物館学的な楽しみも味わえます。

内部の凝った造りや内装は当時のままに豪華さを保っています。 入ってすぐの図書室には全て羊皮紙装の見事な本が並んでいます。

所蔵品の質はフランスではルーヴルに次ぐと言われ、 ピエロ・ディ・コジモ以外にもジャン・フーケの 「エティエンヌ・シュヴァリエの祈祷書」の彩色写本画40点を始めとして、 ウェイデン、リッピ親子、メムリンク、ボッティチェッリ、ペルジーノ、 ギルランダイオ、フランチャ、ラファエロ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、 プッサン、ダイク、ムリーリョ、ヴァトー、アングル、コロー、ドラクロア、 等の名画800点余りが四方の壁に何段にも隙間なく飾られています。

最高の美術品と豪華な内装を眺めながら、 最後のフランス王家の衿持と諦観に思いを馳せた事でした。


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