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美術館訪問記-53 モンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:キウスーレから見たモンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院

添付2:モンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院

添付3:モンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院回廊

添付4:ソドマ作
「家を出てローマに向かうベネディクト」

添付5:ソドマ作
「壊れた机を直すベネディクト」
中央立っている帽子の男性はソドマの自画像

添付6:ソドマ作
「柱に縛られたキリスト」

ソドマ(1477-1549)は本名ジョヴァンニ・アントニオ・バッツィ。 ピントゥリッキオと共にイタリア、シエナで 盛期ルネサンス様式を実践した最初の一人でした。 レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けた優雅な画風です。

ソドマの作品は世界40箇所に残っていますが、 当然ながらシエナに一番多く、8箇所にあります。

しかし彼の作品を最も大量に観られるのは、シエナから30km程東南に位置する 「モンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院」です。

素晴らしいトスカーナの眺めが楽しめ、 「ヨーロッパ一眺めのいいテラス」と言われる小さな公園がある、 バールとトラットリアがあるだけの小さな村、キウスーレの近くにあります。

少し離れた駐車場から、 神社の参道のように鬱蒼と木々の繁る道を通って修道院へ進みます。

入ると直ぐの所が長方形の中庭で、それを取り巻く四面の壁に 「聖ベネディクトの生涯」を描いたソドマとルカ・シニョレッリの フレスコ画36面がズラリ。

これらはイタリア・ルネサンスの最も重要な絵画の一つといわれます。

中庭の周囲は回廊になっており、その上に屋根があるので、 壁は風雨から守られる形になっています。 その為か500年前のフレスコ画とは思えぬ鮮明さで殆どが残っています。 人里離れた修道院で、侵略や強奪に無縁だった事も幸いしているでしょう。 ルカ・シニョレッリが1498年までに9面を描いた後を受け、 1505年に契約されているということなのでソドマは28歳。 既に名声は得ていたでしょうが、その若さがなければ、 こんな寂しい山の中で恐らく何十ヶ月も寝泊りしての孤独な作業は できなかったのではないでしょうか。

今に残る27面のフレスコ画は、緩急というか、 力を入れた所と流した所が明らかにあり、力をいれた所には ソドマの持つ独特の明るさ、伸びやかさ、輝き、生命感等の魅力があります。

特に聖ベネディクトの生涯とは別に、クロイスターの入り口に描かれた 2点の小さ目のフレスコ画、「十字架を運ぶキリスト」と「柱に縛られたキリスト」 は甘美な哀愁を湛え、印象的。

修道院は今も機能しており、大勢の修道士を見かけました。 見学できるのは中庭の周りだけですが、2階や小礼拝堂も許容範囲。 その通路の壁にも壁画が残っています。

駐車場の傍にはレストランもあり、混雑していました。


注 :

聖ベネディクト:西方教会における修道制度の創始者とされる聖人。歴史上の人物。480年頃-547年。
ローマ貴族の生まれながら、神に生涯を捧げる決心をして、修道生活に入り、ローマの東約60kmの所にあるスビヤコで12の修道院を設立後、南イタリアのモンテ・カッシーノに修道院を建て終生そこで過した。
530年頃修道会則を定め、この会則に従う修道院をベネディクト会と呼ぶ。

美術館訪問記 No.54 はこちら

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