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美術館訪問記 – 511 シェッツラー宮殿、Augsburg

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:シェッツラー宮殿正面

添付2:ヘラクレスの噴水

添付3:庭園から見たシェッツラー宮殿

添付4:シェッツラー宮殿内祝祭の間

添付5:バルテル・ベーハム作
「身支度する女性」

添付6:ストスコップフ作?
「ルーカス・クラーナハ作「メランクトンの肖像画」のある静物画」

添付7:ハンス・ホルバイン父作
「ベロニカ・ウェルザーの肖像」

添付8:デューラー作
「ヤーコプ・フッガーの肖像」

添付9:ヴェロネーゼ作
「ヴィーナスとアドーニス」

添付10:ティツィアーノ作
「ヴィーナスとアドーニス」 プラド美術館蔵

ドイツ、アウクスブルクはミュンヘンの北西60㎞足らずの場所にある 人口30万人足らずの都市です。

ここにある「シェッツラー宮殿」は1765年から1770年にかけて銀行家だった リーベルト・フォン・リーベンホーフェンにより建てられた宮殿です。

アウクスブルクの中心を貫くマキシミリアン通りに面したバロック建築の館で、 前の通りの中央には市内屈指の見事な噴水、ヘラクレスの噴水があります。

この噴水は、アウクスブルクの街が紀元前15年頃ローマ人によって 創設された事を象徴し、1602年に建てられました。

宮殿の正面入り口には紋章があり、金の派風飾りの付いたバルコニーが印象的。 前面はそれ程とも見えませんが奥に長く伸び、幾つもの大広間や庭園があります。

なかでも目を引くのは、ロココの極みの華麗なる祝祭の間。 マリー・アントワネットが1770年4月28日、ここで踊り明かしたという 煌びやかな大広間で、木製の床が軋む造りとなっています。

この館は現在、ドイツバロック美術館と州立絵画館から構成されています。

入ると2階からドイツバロック美術館が始まり、南ドイツ出身の17,18世紀の 画家たちの作品が並んでいましたが、特筆するようなものはなく、 ルネサンス時代の画家バルテル・ベーハムの「身支度する女性」があった程度。

バルテル・ベーハムは、1502年、ニュルンベルクの画家一家に生まれ、 父や兄、同市居住のアルブレヒト・デューラーの下で修業後、ミュンヘンへ移り、 バイエルン公ヴィルヘルム4世に使え、肖像画家として認められます。

ヴィルヘルム4世はベーハムを更なる勉強のためイタリアに派遣しますが、 ボローニャで病気に罹り、38歳の若さで客死してしまいます。 彼はこの頃のドイツ人画家の常として版画も多く残しています。

滅多にお目にかかれないストスコップフも1点ありましたが、 「ルーカス・クラーナハ作「メランクトンの肖像画」のある静物画」という これまで観て来たものとは全く異質の絵で、真作なのか疑問に思いました。

州立絵画館には宮殿に隣接した元聖カタリナ修道院も含まれ、 アウクスブルク出身のハンス・ホルバイン父の作品が11点も展示されていました。

ここにはデューラーの「ヤーコプ・フッガーの肖像」もありました。

フッガー家はアウクスブルクを本拠に宗教改革の前後にわたりヨーロッパで最も 繁栄した一族であり、ヤーコプはフッガーライと呼ばれる貧民救済のための106軒 もの集合住宅を市に寄贈するなど、慈善事業にも力を入れた傑物でした。

この肖像画は時代を代表する人物の余裕とゆとり、強い意志を持つ人格像を 余すところなく描き切った傑作と言えるでしょう。

ヴェロネーゼ作の「ヴィーナスとアドーニス」もありました。

どこかで観たような気もしたのですが、プラド美術館にあった ティツィアーノ作の同一主題作品を思い出させるものなのでした。

アドーニスはギリシャ神話に登場する美少年で、狩りが大好き。彼を愛した ヴィーナスは狩りは危険だから止めるようにといつも言っていたのですが、 アドーニスはこれを聞き入れず、ある日猪に襲われて死んでしまうのです。