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美術館訪問記 – 498 オールド・ライブラリー、トリニティ・カレッジ

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:トリニティ・カレッジ校内、7月21日11時頃撮影

添付2:オールド・ライブラリーの建物 写真:Creative Commons

添付3:オールド・ライブラリー入り口前

添付4:ケルズの書「玉座のキリスト」

添付5:ケルズの書「XPI(キリストを示す)飾り文字」

添付6:ケルズの書

添付7:ロング・ライブラリー

添付8:ブライアン・ボルーのハープ 写真:Creative Commons

ダブリン市内の中心部にダブリン大学トリニティ・カレッジがあります。1592年、イングランド女王エリザベス1世によって創立された由緒ある大学です。

イギリスの名門大学、オックスフォードやケンブリッジを手本に創られたのですが、これらの大学とは異なり、カレッジは一つしかありません。従って単にトリニティ・カレッジやダブリン大学とも呼ばれます。

敷地面積190,000㎡、約57,000坪。首都の中心部に日本の皇居のようにシンボリックに佇んでいます。尤も広さは皇居内濠内の1/6程度ですが。

この構内に「オールド・ライブラリー」があります。

開館時間の8時半少し前に着くと、月曜日の朝でしたが予約者が結構並んでおり、無予約者は10人程並んでいました。勿論、予約者から優先入場できます。

この1階にある装飾写本「ケルズの書」は国宝であり、世界でもっとも美しい本と言われます。豪華なケルト文様による装飾が施された典礼用の福音書で、四福音書が収められています。言語はラテン語。

縦約33cm、横約24cmの中に、福音書の著者たちの肖像や、その象徴であるライオン、牛、ワシ、キリストの一生の3つの場面などが描かれています。

思っていたよりかなり大きい。どうやって描いたのかよく解らない程緻密に美麗に、まるで印刷したように描かれています。銀板のような光沢のある表面に、絵画は筆跡も一切なく、文字は全て直線状に滲みなく描かれています。

これが全て手書きの写本で西暦800年頃のものとは信じられません。この本の美しさ程、観る前の想像と実物の素晴らしさの隔たりを感じたものはない。

レオナルド・ダ・ヴィンチに匹敵する美の天才が当時もいたのだとしか考えられません。透明なガラス箱に顔を付けるようにして見入りました。

ケルズの書の成り立ちは諸説あり、定説はないようですが、スコットランド、アイオナ島のアイオナ修道院で制作が着手され、その後アイルランドのケルズ修道院で完成されたというのが一般的なようです。

ケルズの書が展示された宝物室は撮影禁止。写真はWebから借用しました。

2階のロング・ライブラリーの偉容も素晴らしい。

中央が3階まで吹き抜けになった奥行き65mの大部屋の両側が2階建ての書棚になっており、2階、3階とも天井まで総計20万冊に及ぶ革表紙の古書が整然と並んでいます。

ガリバー旅行記の著者でトリニティ・カレッジの卒業生でもあるジョナサン・スウィフトやホーマー、ソクラテス、プラトンなどの胸像が書棚の設置された柱の中央通路沿いにそれぞれ置かれています。

アイルランドの国章のモデルにもなった、15世頃の作という国内最古のハープ「ブライアン・ボルーのハープ」もこの部屋にありました。

ブライアン・ボルーは10世紀から11世紀にかけてアイルランドを統一し、王になった実在の人物で、このハープは彼が所持していたという古くからの言い伝えで名付けられていたのですが、19世紀になっての科学的調査で15世紀頃の作と判明したものの、名前はそのままになっているのです。