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美術館訪問記 - 462 アリアナ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:アリアナ美術館

添付2:品川寺の梵鐘摸刻、アリアナ美術館蔵

添付3:アリアナ美術館中央ホール

添付4:ヴェネツィアングラス、16世紀後半

添付5:花瓶、景徳鎮製、1630年

添付6:水差し、ファンヤンス焼き(彩色フランス陶器)、18世紀初期

添付7:皿、有田焼、1740年頃

添付8:寝室用便器、マイセン焼、1740年

添付9:磁器「奴隷解放」、チューリッヒ製磁器、1770年

ジュネーヴのレマン湖畔の緑豊かなアリアナ公園内に、国連ジュネーヴ事務局と並んである、まるで離宮のようにしゃれた美術館を紹介しておきましょう。

ジュネーヴの名士で考古学者、美術蒐集家でもあったギュスタヴ・ルヴィリヨが1877年から1884年にかけて建設した「アリアナ美術館」。

1890年、彼の死後、遺贈により美術館はジュネーヴ市の所有となっています。

彼の母親の名前であるアリアナと名付けられたこの荘厳な建物は、ジュネーヴ市の文化遺産でもあり、世界の陶磁器やガラス器の逸品を集めており、ヨーロッパでも最大級を誇るそのコレクションは、ヨーロッパ、中近東、アジアの、中世から現代に至るまでの約1200年間の陶磁器、約700年間のガラスの歴史を物語る20000点近くの作品を網羅しています。

このアリアナ美術館は、陶磁器以外にも二つの点で日本に縁があります。一つは品川寺(ほんせんじ)の大梵鐘、もう一つは桜の並木道です。

品川寺の大梵鐘はパリ万博に出品する名目でヨーロッパに渡った1867年以降行方不明となっていたのですが、ルヴィリヨがアーラウの鋳造所で発見して買い取り、アリアナ美術館の庭園に飾っていたのです。

たまたま日本の外交官がこの地を訪れた際にこの梵鐘に気付き、日本政府を通じて返還要求を行ったところ、美術館の所有者となっていたジュネーヴ市が1930年に品川寺に返還しました。

この謝意と友好の証として品川区民の寄付を元にレプリカを製作して1991年にジュネーヴ市に寄贈し、ジュネーヴ市と品川区は友好憲章を結んでいます。

品川寺の梵鐘は1657年に鋳造されたもので、鐘面には6体の観音像が浮き彫りされ、さらに観音経一巻が陰刻されており、「世にまれなる梵鐘」として、1941年国宝に指定されています。

また2014年、日本とスイスの国交樹立150周年を記念して、ジュネーヴ日本倶楽部が20本の桜をジュネーヴ市に寄贈しました。その桜は、美術館から大梵鐘の前を通り国連欧州本部に向かう庭園の小路に沿って植樹され、ジュネーヴ市の計らいでその小路は「桜の並木道」と名付けられました。

2階建ての美術館内部は階段の見えない吹き抜けのユニークな構造になっています。

この建物は、ジュネーヴ市の文化遺産でもあり、陶器、砂岩陶器、磁器、ガラスなど、古今東西の優れた工芸品を一堂に観ることができる贅沢な美術館です。

中国の景徳鎮、日本の有田焼、ドイツのマイセンなどを展示しており、陶磁器の歴史や産地などが一目瞭然のわかりやすい展示方法を採っていました。

なお私がここを最後に訪れたのは2001年で、まだディジタルカメラを使用しておらず、写真は全てアリアナ美術館のHPから借用しました。