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美術館訪問記 -443  リール美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:リール美術館正面

添付2:リール美術館1階内部

添付3:ルーベンス作
「キリスト降架」

添付4:ボスの追随者作
「聾唖者達のコンサート」

添付5:上記の添付プレート

添付6:シャルダン作
「静物」

添付7:アルフレッド・アガッシュ作
「虚栄」

添付8:ドラクロア作
「メーディア」

添付9:ゴッホ作
「牛」

前回のフランス、ランスから北北東に30㎞足らずの場所にベルギーと国境を接する リール(Lille)市があります。ノール県の県庁所在地です。

ここに「リール美術館」があります。 ルーヴル・ランス美術館まで来たら、この美術館を訪れない手はありません。

ルーヴル美術館に次ぐフランス第2の規模を誇る美術館で、 フランス国内ではパリ外にある美術館としては最大です。

創立も1795年で、大ヴァトーと呼ばれる画家アントワーヌ・ヴァトーの弟の息子で 「リールのヴァトー」と呼ばれるルイ・ヴァトーの指揮のもとに創設されました。

コレクションが充実する契機となったのは、1801年に発布された シャプタルの政令でした。この政令により、ルーヴルとヴェルサイユの 美術コレクションの一部が、フランス国内の15の都市に割り当てられることとなり、 リールはそのうちの1都市としてコレクションを受け入れることが決まったのです。

こうして王室やパリの教会などが革命前に所有していた由緒ある美術作品の中から、 46点の良質な絵画がリール美術館の新たなコレクションとして加わりました。

現在の壮麗なベル・エポック様式の建物が完成したのは1892年。 噴水のある広大な広場を挟んで県庁舎と向かい合って建つ豪華な美術館です。

所蔵品も堂々としたもので、昔リールの属していたフランドルの出身者は、 ロヒール・ファン・デル・ウェイデンを始めとしてディルク・ボウツ、 ピーター・ブリューゲル親子、ヤン・ブリューゲル親子、 大作「キリスト降架」を含むルーベンスの12点、ハル、ヨルダーンス、ダイク、 ステーンと当然のように揃っています。

実は最初に訪れた時はボス作の「聾唖者達のコンサート」がありましたが、 今回は添付のプレートに作者名がBosch(d'après)とあり、追随者の作なのでした。

このように海外では作者名に付加語が付いている場合、注意が必要です。 参考のために英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の順に提示しておきます。

追随者:follower/ d'après/ dopo/ nach コピー:copy/ imitateur/ da/ kopie 周辺者:circle/ cercle/ ambito/ kreis 工房:studio/ atelier/ studio/ studio 弟子:disciples/ disciples/ bottega/ jünger 偽作:fake/ faux/ fasullo/ falsch 帰属:attributed/ imputée/ attribuì/ zugeschrieben

但し、コピーを複製や模写、複写などとも言うように、 外国語でも綴りが異なる同義語が他にもあります。

イタリア絵画もボッティチェリ、フィリッピーノ・リッピ、ベッカフーミ、 ブラマンティーノ、ポントルモ、ティントレット、ヴェロネーゼ、カナレットと 負けてはいません。

フランス絵画もナティエ、シャルダン、ブーシェ、ジャック=ルイ・ダヴィッド、 コロー、セオドール・ルソー、ミレー、クールベ、ブーダン、モローと勢揃い。

パリに集ったマネ、シスレー、ルドン、モネ、ルノワール、ゴッホ、スーラ、 ロートレック、ボナール、シャガールもありました。

この他にも、エル・グレコ、リベーラ、ゴヤの大作2点、コンスタブル、 アルマ=タデマと網羅しています。

ルイ・ヴァトーの息子で、同じく「リールのヴァトー」と呼ばれた フランソア・ルイ・ヴァトーの作品も目につきました。 彼は1808年から亡くなる1823年まで当美術館の副館長を務めました。

リール出身の画家では、19世紀末に活躍したアカデミーの画家 アルフレッド・アガッシュが新発見でした。

美術館本の表紙を飾っている彼の「虚栄」は心に残ります。

ドラクロワのタッチを見せぬ古典的な描き方の大作「メーディア」と これまで観た事もなかったゴッホの「牛」、 ピカソの「毛皮の襟のついた服を着たオルガ」は特に印象に残る作品でした。

ピカソの作は殆ど白1色の生地の上に黒い線で輪郭のみを描いた油彩作品で、 彼としては非常に珍しい。



(添付10:ピカソ作「毛皮の襟のついた服を着たオルガ」は著作権上の理由により割愛しました。
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