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美術館訪問記 - 421 カステル・ヌオーヴォ

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:カステル・ヌオーヴォ正面

添付2:カステル・ヌオーヴォ内に置かれた仮面

添付3:ルカ・ジョルダーノ作
「聖ニコラウスの栄光」

添付4:フランチェスコ・ソリメーナ作
「聖母子と聖マウルス」

添付5:2階展望所からの眺め、ポンペイの悲劇を生んだヴェスヴィオ火山が見える

添付6:カステル・ヌオーヴォ航空写真 写真:Wikimedia

ナポリ・シリーズも10回目。 ひとまず「カステル・ヌオーヴォ(新城)」で最後にしましょう。

ナポリ港に面して建つ、周囲に深い濠をめぐらせた城は、 アンジュー家のカルロ1世が1279年に建設した最初の城を、 1443年アラゴン家のアルフォンソ1世が全面的に改築したものです。

新城という名前ながら、700年以上経っているのです。

四隅に太い円筒状の塔を持つ城壁と濠で囲まれています。 入り口だけにもう一つ塔があり、この面には三つの塔が見えます。

この城の入口はナポリ湾の反対側、西北にあり、間違えて東側に行くと 城壁の周りを1km近く歩かされることになるので、注意して下さい。

その正面右側に2つの塔に挟まれて、アルフォンソ1世のナポリ入城を記念して 1468年に完成した凱旋門があります。

黒ずんだ城壁の間に、この門だけは白大理石で造られているので、 一際目立つようになっています。

この門はルネサンス様式の傑作といわ、王の凱旋行進の様子を示すレリーフや アラゴン家の紋章を示すレリーフ、人面等様々な彫り物が門を飾っています。

上部に並ぶ4体の彫像は、節制、正義、不屈の精神と寛大さの4徳の擬人像。 最上部で一人剣をかざしているのは、大天使ミカエルなのです。

城内には市立美術館があり、その入口にはスターウォーズの ダースベーダーの被るような巨大な青銅の仮面が置いてありました。

美術館の所蔵品はナポリで活躍した画家たちの作品ですが、 有名どころは乏しく、ルカ・ジョルダーノとフランチェスコ・ソリメーナの 1点ずつぐらいのものでした。

ルカ・ジョルダーノの「聖ニコラウスの栄光」は聖ニコラウスが聖母マリアに 天国で迎えられている場面ですが、彼のアトリビュート(属性)である 三つの金の玉を天使が捧げ持っています。

聖ニコラウスはギリシャ南部の港町パードレの 裕福な家庭に生まれ育ち、 後にトルコ南部のリュキュア地方のミュラ、 現トルコのイズミルの司教となった 人物で4世紀半ばに死亡した実在の聖人ですが、数々の伝説で彩られています。

その一つが三つの金の玉のお話で、彼がまだ司祭になる前、ニコラウスの近所に 3人の娘のいる家族が住んでいました。この家族は大変貧しく、長女は娼婦に 身を落とさなければならない状況に追い込まれていました。

そのことを知ったニコラウスは、その夜、隣の家の煙突から金の玉を投げ入れます。 ちょうどその玉は、暖炉のそばに干してあった靴下の中に入って、 その金の玉をお金に換えて娘は救われ、幸せな結婚をすることができたのです。

聖ニコラウスは、同じ事を下の2人の娘の時も繰り返し、その家庭を救いました。 三女の時、両親はもしかしたら又誰か金の玉を放り込んでくれるかも知れないと 考え、その人に必ずお礼を言わなければと、夜ずっと隠れて待っていました。

そしてついに三度目の金の玉を届けに来たニコラウスを見つけ、 それが隣人の若者であったと知り驚き、感謝しました。 しかし彼は誰にもこのことは言わないようにと言い、立ち去りました。

一説では子供に贈り物をするサンタクロースのお話は聖ニコラウスに起源があり、 クリスマスに靴下を下げておくと、サンタクロースが煙突から入って 贈り物を入れてくれるという習慣は、ここから生まれたと言われています。

フランチェスコ・ソリメーナの「聖母子と聖マウルス」は、 溺れかかった子供を救助するため、水の上を歩いて救ったという奇跡の聖人 マウルスを描いたもの。

この美術館の2階の展望所からの眺めは素晴しい。