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美術館訪問記 - 416 ナポリ大聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:群衆に液化した血液を見せるナポリ大聖堂司教
写真:Creative Commons

添付2:ナポリ大聖堂正面

添付3:ナポリ大聖堂入口

添付4:ナポリ大聖堂内部

添付5:ナポリ大聖堂天井

添付6:ランフランコ作
「天国」

添付7:リベーラ作
「熱炉から出て来る聖ジェンナーロ」

添付8:ペルジーノ作「聖母被昇天」
写真:Creative Commons

添付9:ピントゥリッキオ作「聖母被昇天」
国立カポディモンテ美術館蔵

添付10:カラファ礼拝堂内

スカッパ・ナポリは今でもナポリ情趣の残る古い町ですが、 ここに「ナポリ大聖堂」があります。

ナポリの守護聖人である聖ジェンナーロを祀っており、5月の第一土曜日と 9月19日の年2回の祭りの日だけ持ち出される聖ジェンナーロの血が入った 乾燥しきった容器の中身が、ミサの終わりには液化する奇跡で知られています。

私は実際に見たことはありませんが、毎年、祭りの日に集まって来る 大勢の群衆の前で本当に液化するのだそうです。

2015年3月21日現教皇フランシスコが大聖堂を訪れた時、この血液は液化し、 2007年に時の教皇ベネディクト16世が訪れた時には液化しなかったそうです。 これは聖ジェンナーロが親愛の情をどちらに持っているかを示しているのだとか。

なおこの血液は密閉された容器に入っている上、聖遺物のため科学的検査は不可能。

聖ジェンナーロまたは聖ヤヌアリウスは歴史上の人物で、305年に殉教し、 打ち首にされていますが、遺体はナポリに搬送されナポリの守護聖人となりました。

大聖堂は5世紀に遡る初期キリスト教時代のバシリカ跡に13世紀末に建設され、 14世紀初に完成。両脇の細長い垂直型三層のファサードは19世紀末に ネオ・ゴシック様式で再建されたもので、唯一14世紀の面影を留めるのが、 中央と左右の門戸周囲の装飾だそうです。

堂内はナポリの大聖堂にふさわしく荘重で華麗な雰囲気を漂わせています。 16本の角柱によって3廊に分けられ、尖頭アーチが架かっています。

身廊の天井は豪華な額縁を思わせる金色の格子天井。実に豪華な造りで、 それらの「額縁」の中には「キリストの誕生」「主の顕現」「神殿への奉献」 「受胎告知」などの絵画17点がはめこまれています。

クーポラの丸天井にはランフランコ作「天国」図が華麗に描かれています。

右側廊2番目の礼拝堂は小さな教会位の広さがあり、聖ジェンナーロを祀っており、 司教帽を被り司教杖を手にした聖ジェンナーロの銀製彫像や、 リベーラ作の「熱炉から出て来る聖ジェンナーロ」の祭壇画がありました。

伝承によると、聖ジェンナーロはベネヴェントに生まれ、20歳の若さでナポリで 司教の座につきますが、キリスト教を弾圧するディオクレティアヌス帝に迫害され、 ナポリ近郊の町ポッツオーリの闘技場で猛獣に食われる刑に処されますが、 けしかけられたライオンが猫のようにおとなしくなってしまいます。

次いで灼熱の窯の中に入れられ蓋をされますが、暫くして蓋を開けると 全く無傷で出てきます。最後には斬首刑で絶命させられました。

右翼廊後陣近くの礼拝堂にはペルジーノの大作祭壇画「聖母被昇天」があります。 彼の代表作の一つとされる見事な出来。

この絵は国立カポディモンテ美術館にあるピントゥリッキオ作の「聖母被昇天」と そっくり。ペルジーノの助手をしていたこともあるピントゥリッキオが 師匠の真似をしたのでしょう。

後陣にある階段から下に降りると、トンマーソ・マルヴィートが1506年に建設した ルネサンス様式のカラファ礼拝堂があり、 マルヴィート作のカラファ枢機卿が跪いて祈っている彫像がありました。

カラファ枢機卿はペルジーノの「聖母被昇天」の注文主でもありました。

左側廊には昔のレスティツータ聖堂が接続しており、 ルカ・ジョルダーノの祭壇画や聖堂建設当時の古い剥落モザイク画があります。