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美術館訪問記-41 サンタ・カーサ聖所記念堂

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:サンタ・カーサ聖所記念堂正面

添付2:サンタ・カーサ聖所記念堂内部

添付3:「聖なる家」を納めた大理石の建物

添付4:メロッツォ・ダ・フォルリ作聖具室壁画

添付5:メロッツォ・ダ・フォルリ作
「ヴィオラを弾く天使」
ヴァチカン美術館蔵

添付6:ロレンツォ・ロット作
「マリアの幼児キリスト礼拝」

添付7:日本の6曲屏風

ロレンツォ・ロットはヴェネツィア出身の画家ですが、 晩年はイタリアの東、マルケ地方のロレートのサンタ・カーサ聖所記念堂で 修道僧として一生を終えました。

この「サンタ・カーサ聖所記念堂」は聖母マリアにまつわる聖所記念堂の中で 最も有名で、1468年ゴシック様式で着工され、ルネサンス様式で完成しました。

「サンタ・カーサ」つまり聖母マリアが受胎告知を受けたとされる「聖なる家」が クーポラの真下にあります。

この彫像と浮き彫りで装飾された白大理石製の建物の中に納められた 「聖なる家」は、13世紀末聖地ナザレが異教徒に侵略され、 その攻撃が及ぼうとした時、突如、天使達が現れ イタリアのロレートへと聖家を運び去ったと伝えられます。

「聖なる家」その物は、外壁は大理石の建物で覆われ、内部は撮影禁止で、 写真はありませんが、イタリアにはない石造りの簡素な小屋で、 横8.5m、縦3.8m、高さ4.1m。北側に扉、西側に窓があります。

この「聖なる家」を納めるために大聖堂が造られたということです。 毎年おびただしい数の巡礼者が訪れるとか。 12月の聖母マリアの祝日には、ヨーロッパ各地から巡礼者が訪れ、 人口約1万人のこの街が20万人にもなるという。

「聖なる家」の周りには礼拝堂が幾つもあり、 モザイクやフレスコ画で埋まっています。 二つある聖具室の内、一つはメロッツォ・ダ・フォルリ、 もう一つはルカ・シニョレッリのフレスコ画で天井まで埋め尽くされています。 共に、ピエロ・デッラ・フランチェスカの弟子だったこの二人の壁画も素晴しい。

メロッツォ・ダ・フォルリ(1438-1494)はイタリア、マルケ地方のフォルリ出身。 ウルビーノ公国に移り、ピエロ・デッラ・フランチェスカの教えを受け、 遠近法や短縮法を身につけ、マンテーニャの影響も受けます。

その後ローマに出て、システィーナ礼拝堂の建立者としても知られる ローマ教皇シクストゥス4世に可愛がられ、「教皇の画家」とまで言われ、 ルネサンス絵画の一翼を担いました。

ヴァチカン美術館にその頃彼が描いた愛すべきフレスコ画の断片が残っています。 ラファエロ同様彼のために特別に一室が与えられています。 サンタ・カーサ聖所記念堂の壁画を描くのはシクストゥス4世崩御後のことです。

高台に石畳の広場を囲んで建つ中世の姿そのままの教会と館。 私は世界中の名だたる教会や寺院を訪れましたが、 この聖所記念堂ほど聖なる場所という感慨を抱いた所はありません。

この聖所記念堂に隣接するアポーストリコ館の2, 3階には、 ロレート市立絵画美術館・博物館があります。 聖所記念堂にまつわる歴史的資料を納める博物館と イタリア古典絵画を納める美術館から構成されています。

中でも素晴しいのは、ロレンツォ・ロットの作品群。 「キリストと密告者」、「聖クリストフォーロ、聖ロッコと聖セバスティアーノ」、 「マリアの幼児キリスト礼拝」、「大天使聖ミカエルと反逆天使ルチーフェロ」等 全部で9作品もあります。 彼の作品がこれだけまとまって見られるのはここだけでしょう。

どういうわけか日本の6曲屏風が1点ありました。

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