ガッレリア・デイタリア美術館は、実はイタリアに3か所あります。
2番目の「ガッレリア・デイタリア美術館」はヴェネツィアの西60㎞程の場所、 ヴィチェンツァにあり、1999年の開館。
ヴィチェンツァの中心部にある美術館が入居している建物は、裕福な商人だった レオーニ・モンタナーリが1678年に建造したもので、ヴィチェンツァに多い パッラーディオ様式とは異なるバロック形式で造られた3階建て。
第二次大戦の被害もなく、紆余曲折の末、現在の所有者はイタリア最大の銀行、 インテーザ•サンパウロ銀行となっています。
室内はスタッコ造りの装飾やフレスコ画で天井まで優雅に飾られ、宮殿の趣。
先ず4世紀から6世紀にかけてのクラテールに描かれた壺絵のコレクションが並ぶ。 クラテールは古代ギリシアでワインと水を混ぜるのに使われた大型の甕です。
続いて18世紀イタリア、ヴェネト地方の画家達のコレクション。 ピエトロ・ロンギの9点を始めカナレット、グアルディ、ティエポロ親子等が 並んでいます。
ピエトロ・ロンギは、1701年、ヴェネツィアの金細工職人の息子として生まれ、 ヴェネツィア、ボローニャで絵を学びました。
初期の頃には歴史画や宗教画も手掛けましたが、大規模な装飾画が求められた 18世紀ヴェネツィアの画家たちの中ではあまり成功しなかったようです。
40歳頃になってから風俗画に移り、日々の小さな出来事を 比較的小さなカンヴァスに描くことで独自の分野を開拓し成功したのです。
ヴェネツィアを中心とする当時の貴族社会や生活、労働者たちを鋭い観察眼で 見つめ、優雅で穏やかな描写の中に軽妙な風刺を織り交ぜながら風俗画として表現。
添付の「象」は、同時代の見世物など特に注目された出来事を、 実際に現場に赴いて写生したシリーズ作品のうちの最初のもので、 当時、欧州中で珍重された異国の動物「象」がヴェネツィアで見世物として 展示された時の様子が描き出されています。
ロンギの作品にはよく仮面をつけた人物が登場しますが、 ヴェネツィアでは昔からカーニバルで仮面をつける風習がありました。
18世紀にはいつしか人々は普段でも仮面とマントで素性を隠すようになり、 特に人に知られずに遊びに行く時には仮面をつけるようになっていったのです。
イタリア最高の風景画家カナレットのタイトルにある「カプリッチョ」とは、 奇想画とも呼ばれ、18世紀には、しばしば実在するものと空想上のものとを 組み合わせた都市風景画を意味しました。
本作の教会は実在したと思われますが、描かれた場所や人物、景色など 幾つかの要素は架空のものなのでしょう。
この美術館のもう一つの柱がロシア以外では世界最大のコレクションと言う ロシア・イコン。500点余りの所有を誇り、内130点を常時展示しているとか。
観終えて中庭に出ると、建物の外観とは異なり、 いかにも富豪の邸宅らしい趣があるのでした。