戻る

美術館訪問記 - 400 アンブロジアーナ絵画館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:アンブロジアーナ絵画館外観

添付2:アンブロジアーナ絵画館内部
写真:アンブロジアーナ絵画館HP

添付3:アンブロジアーナ絵画館内部「偉大な人々の中庭」

添付4:レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「アトランティコ手稿」

添付5:カラヴァッジョ作
「果物篭」

添付6:レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「音楽家の肖像」

添付7:ジョヴァンニ・アンブロージョ・デ・プレディス作
「貴婦人像」 写真:GFDL

添付8:ベルゴニョーネ作「聖会話」

添付9:ブラマンティーノ作
「幼児キリスト礼拝」

添付10:ラファエロ作
「アテネの学堂下書き」 写真:アンブロジアーナ絵画館HP

ミラノには訪れるべき美術館がまだまだあります。

その一つがミラノの中心、ドゥオーモ広場から西に200m足らずの場所にある 「アンブロジアーナ絵画館」。 アンブロジアーナの名前はミラノの守護聖人聖アンブロージョに基づいています

芸術保護者として知られたミラノの枢機卿フェデリーコ・ボッローメオによって 1618年に設立された、ミラノ最古の美術館。 枢機卿のコレクションが所蔵品の中核をなしています。

同枢機卿が1609年に開設した、公共図書館としては世界最古のものの一つ、 アンブロジアーナ図書館とアンブロジアーナ館に同居しています。

館内は宮殿のように美麗で、大理石の床や柱、フレスコ画やモザイク画で 飾られた壁や美しいステンドガラスも見逃せません。

迷路のような道順を辿って行くと昔の修道院の回廊に出ます。 そこから著名な文学者と哲学者のブロンズ像がある 「偉大な人々の中庭」も見ることができます。

ルネサンスの雰囲気に浸りながらルネサンス絵画やバロック絵画を鑑賞できる 贅沢な環境がここにはあります。

この館にはレオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティコ手稿」が 所蔵されている事でも有名です。

1119頁の手稿はレオナルドの自然観察の記録や考案した機械の設計スケッチ などで埋められており、現存するレオナルドの全手稿の5分の1以上にあたる 貴重なものです。

なお、第396回のスフォルツェスコ城にはレオナルドの「トリヴルツィオ手稿」 51紙葉が保存されています。

絵画コレクションは大きく3つに分類できます。 第1はレオナルド派を含むロンバルディア派、第2はヴェネツイア派、 第3がドイツおよびフランドル派です。

この絵画館で特筆すべきはカラヴァッジョの「果物篭」と、世界11か所でしか その作品が観られない、レオナルド・ダ・ヴィンチの「音楽家の肖像」でしょう。

「果物篭」は西洋美術史上最初の静物画ともいわれます。 カラヴァッジョの修行した北イタリアのロンバルディア地方では、 アルプス以北の写実的で精緻な描写の影響がありました。

新鮮な果物と虫に食われた果物、生き生きとした葉としおれた葉の対比が、 この世のむなしさ=「ヴァニタス」を示しています。

「音楽家の肖像」は地階の図書館横の特別室に、一時は同じくレオナルド作と 考えられ、今はジョヴァンニ・アンブロージョ・デ・プレディスの作と 考えられている「貴婦人像」と共に置かれていました。

「音楽家の肖像」は今に残るレオナルドの彩色画21作品中唯一の男性肖像画で、 音楽も人並み優れていたレオナルド・ダ・ヴィンチの自画像とする学者もいます。

ただ「音楽家の肖像」がレオナルドの真作かどうかは異論もあるようです。

ミラノで活躍した画家、ベルゴニョーネ、ベルナルド・ルイーニ、 ジャンピエトリーノはここでも佳作に出会いました。

ブラマンティーノの「幼児キリスト礼拝」は不思議な絵です。 見たことのない構図、能面のような無表情の登場人物達、最後尾の4人の楽師達、 アーチを描く建物、どれをとっても特異。

ブラマンティーノは初登場。 1465年頃ベルガモの生まれで本名バルトロメオ・スアルディ。

イタリアの盛期ルネサンスを代表する建築家ブラマンテの弟子で 小ブラマンテを意味するブラマンティーノと呼ばれました。

1508年にローマで活躍している記録があるほかは, 1530年に没するまで主としてミラノで画家、建築家として活動しています。

彼の画家形成期にミラノにいて、師のブラマンテの同僚だった、 レオナルド・ダ・ヴィンチの影響が特に顔の表現に見られますが、 この特異な絵にはフェッラーラ派の影響も感じられます。

ブラマンティーノの作品はスフォルツェスコ城やブレラ美術館も所蔵していますが、 他にはルーヴルやメトロポリタン、ロンドン・ナショナル・ギャラリーなどの 数少ない著名美術館しか所有していません。

ヴェネツィア派ではティツィアーノの「東方三博士の礼拝」や、ヴェロネーゼ、 チーマ・ダ・コネリアーノ、ティエポロなどがあります。

ラファエロの大作「アテネの学堂」の原寸大(285 x 804cm)の下書きも秀逸ですが、 仕上げ段階で最後に描き加えられたというミケランジェロを模した ヘラクレトス像はこの下書きにはありません。

拙文をお読みになっている時はどうか判りませんが、 バガッティ・ヴァルセッキ美術館同様私が最後に訪れた時までは館内は撮影禁止。 従って添付写真はアンブロジアーナ絵画館のHPやWebから借用しました。