美術館訪問記 -399 バガッティ・ヴァルセッキ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:バガッティ・ヴァルセッキ美術館外観

添付2:バガッティ・ヴァルセッキ美術館内部
写真:美術館HP

添付3:バガッティ・ヴァルセッキ美術館内部 写真:美術館HP

添付4:バガッティ・ヴァルセッキ美術館内部 写真:美術館HP

添付5:バガッティ・ヴァルセッキ美術館内部 写真:美術館HP

添付6:ジャンピエトリーノ作
「多翼祭壇画」 写真:美術館HP

添付7:ジャンピエトリーノ作
「多翼祭壇画、中央部分」 写真:美術館HP

添付8:ジョヴァンニ・ベッリーニ作
「聖女ユスティナ」 写真:美術館HP

添付9:サンタ・ジュスティーナ教会、パドヴァ
写真:Creative Commons

ポルディ・ペッツォーリ美術館から東へ200m足らずの場所に 「バガッティ・ヴァルセッキ美術館」があります。

どちらの美術館も昔は貴族の館だった邸宅美術館らしく、ミラノの街の中央付近に 位置していますが、こちらの館は莫大な遺産を相続したファウストと ジュゼッペ・バガッティ・ヴァルセッキ兄弟2人が2分して住み、 共同でルネサンス時代の装飾で館を飾るのに全精力と全財産を注ぎ込んだのです

1880年代、二人は一族の住まいを、ロンバルディアの1500年代風の住居を イメージしたものに改築することを決意。

1883年、彼らの住居が完成すると、その情熱はさらに、当時の生活様式を 実際に楽しめるよう、家中の全ての部屋をアンティーク家具で 統一させることになりました。

兄弟の死後、この邸宅は彼らの相続人らにより1974年まで使用されていました。 この年、ジュゼッペの息子の一人が、バガッティ・ヴァルセッキ財団を設立。 これまでに一族が収集してきた美術品を寄付しました。

その20年後の1994年、バガッティ・ヴァルセッキ美術館は一般に公開されました。

住居は現在、ヨーロッパで保存されているハウス・ミュージアムの中でも 保存状態のいいものの一つであり、内部は家具、陶器、武具などの ルネサンス期のコレクションで満たされています。

無料の日本語の音声ガイドで、一族の歴史から部屋ごとの主要作品の詳しい説明を 聞きながら進むとたっぷり1時間以上かかりますが、つい数十年前まで一族が 住んでいた館の見学は、貴族の生活ぶりを見る意味でもとても興味深いものです

中世から今に世界で唯一残る木製の幼児用歩行器もありましたが、 彼らは集めた美術品を飾っておくのではなく、 全て日常生活で使用したということです。卓見です。

大きな屋敷内はファウスト一家とジュゼッペ一家がそれぞれ使用していた スペースと、一緒に使用していたスぺ―スに分かれていて、当時の生活ぶりが 垣間見られるサロンやシャワールーム、食堂、寝室などがあります。

家に電気を引くのはまれだった時代でしたが、この館には電気が引かれ、 シャワー室は現在のようにシャワー口からお湯が出てくるようになっていました。

暖炉の上には、人間の価値を決めるのは、貴族の家柄や財産ではなく、 教養と人格であるというような趣旨の言葉が書かれているそうです。

当時の美意識に溢れた貴族の生活を垣間見ることができる面白い美術館。

絵画も数多く飾られています。ジャンピエトリーノの多翼祭壇画と ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖女ユスティナ」は、特に印象に残りました。

ジャンピエトリーノは本名ジョヴァンニ・ピエトロ・リッツォーリ。 レオナルド・ダ・ヴィンチのミラノ時代からの弟子で、師匠によく似た画風で、 師の作品の複写も多く、時にはレオナルド作品と間違われた事もあったようです。

彼の活動期間は1495年から1549年。師の死後も30年間は活動したため、 残した作品も多く、世界各地の美術館に所蔵されています。

聖女ユスティナはキリスト教の聖女で貴族の家に生まれ, ディオクレティアヌス帝時代にパドヴァで受洗し,後に異教に改宗するよう 強制されたのを拒否。304年10月7日軍兵に胸を刺されて殉教します。

6世紀に同市の聖女の墓の上に建立されたサンタ・ジュスティーナ教会が 16世紀に再建されて以来,崇敬が広まりました。

パドヴァ、ヴェネツィアの美術に多くユスティナ像が見られます。

美術ではうら若い王女の姿で表現され,持物は胸に突き刺さった剣やシュロの葉等。 アンティオキアの同名の聖女の持物,一角獣(純潔の象徴)を伴うこともあります。

「聖女ユスティナ」はミラノで枢機卿や大司教を輩出したボッロメーオ家が ベッリーニに描かせ,同家からバガッティ・ヴァルセッキ家に輿入れした女性が 持ち込んで来たものなのだとか。

イタリアでは急速に撮影禁止が解かれているので、拙文をお読みになっている時は どうか判りませんが、私が最後に訪れた時までは館内は撮影禁止。 従って添付写真はバガッティ・ヴァルセッキ美術館のHPから借用しました。