美術館訪問記 -396 スフォルツェスコ城

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:スフォルツェスコ城正面 
写真:スフォルツェスコ城HPより

添付2:レオナルド・ダ・ヴィンチ作の天井装飾

添付3:ミケランジェロ作
「ロンダニーニのピエタ」

添付4:フィリッポ・リッピ作
「聖母子と聖人、天使達」

添付5:ヴィンチェンツォ・フォッパ作
「書物の聖母」

添付6:アントネッロ・ダ・メッシーナ作
「聖ベネデット」

添付7:ジョヴァンニ・ベッリーニ作
「聖母子」

添付8:ベルゴニョーネ作
「ピエタ」

添付9:ロレンツォ・ロット作
「若者の肖像」」

添付10:コッレッジョ作
「聖母子と洗礼者ヨハネ」

ミラノの中心、ドゥオーモ広場からオレフィチ通りを西北に真っ直ぐ歩いて5分、 レンガ積みの城壁が周囲を取り囲む109メートルという高い塔が見えてきます。

入り口の塔の前には、円形の噴水と馬に乗ったフランチェスコ・スフォルツァ公の 彫刻が置かれるこの城が「スフォルツェスコ城」。

ここは小規模だったヴィスコンティ家の城を15世紀後半に フランチェスコ・スフォルツァが増築したミラノ最大の城。

増築時は星型の形状の広大な城郭だったようですが、現存しているのは 元々の面積の1/4程度以下で、残りの敷地は公園や道路となっています。

城へ入るだけなら無料で、いつも家族連れと観光客で賑わっています。 現存する城内には古代美術館、絵画館、古代エジプト博物館、装飾芸術美術館、 写真資料館等があります。

目当ての所だけに行くのは難しく、古代美術館から順に歩いていくしかなさそう。

古いフレスコ画断片や石棺等の間を歩いていくとだだっ広い部屋に出ます。

この部屋は天井もやけに高く、図柄も定かでない、木の根を張り巡らしたような 剥落したフレスコ画が天井を覆っているだけで、広い空間となっています。 この天井画はレオナルド・ダ・ヴィンチの作。 しかし、ほとんどの人がそれと気づかずに通り過ぎていきます。

知っていてつくづくと眺めても、レオナルドの片鱗も感じられません。 それだけ剥離が進んでいることもあり、高すぎてよく見えないこともあります。

その部屋を抜け、下り勾配の展示品の間を少し下っていくと、 最下部の所が隔離されたようになっています。 ここにミケランジェロの「ロンダニーニのピエタ」があります。 特別な台座の上に置かれている為か、大きく見えます。

ミケランジェロは4つのピエタを制作していますが、完成したのは 最初に制作した、サン・ピエトロ大聖堂にあるピエタだけです。

残りの3作品は未完成のままであり、2作目と3作目はフィレンツェの ドゥオーモ博物館、アカデミア美術館にそれぞれ収蔵されています。

そして4作目となるのがこの「ロンダニーニのピエタ」。 このピエタは、1559年から制作が始まり、視力を失いながら手探りで 制作されたものであり、ミケランジェロが死の直前まで手がけた遺作です。

未完成ながら素朴なその形態から人生の哀惜が伝わってくるようです。

この部屋を出て階段を上がると、一旦外に出ます。 中庭があり、水を湛えたプールを取り巻いて芝生が植わっています。 ここは出入り自由。家族連れや観光客が戯れています。

それを横目に階段を上がると2階が絵画館。

ここにはリッピ、メッシーナ、クリヴェッリ、ベッリーニ、ロット、ティエポロ、 ティツィアーノ、コッレッジョ、ブロンヅィーノ、ティントレット、リベーラ、 カナレット、グアルディ等、絵画史上に燦然と輝く錚々たる顔触れが並んでいます。

中でも目についたものを順に挙げてみましょう。

フィリッポ・リッピの「聖母子と聖人、天使達」は彼らしくない絵で、 登場人物の異様な目つきは不気味でさえあります。


 古風ながら目を惹くヴィンチェンツォ・フォッパの「書物の聖母」、
 世界でも数少ないアントネッロ・ダ・メッシーナの「聖ベネデット」、
 別格の感のあるジョヴァンニ・ベッリーニの「聖母子」、
 哀感溢れるベルゴニョーネの「ピエタ」、
 迫力の凄いロレンツォ・ロットの「若者の肖像」、
 聖母子の表情が現代的なコッレッジョの「聖母子と洗礼者ヨハネ」。