美術館訪問記 -392 サン・シンプリチャーノ聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サン・シンプリチャーノ聖堂

添付2:サン・シンプリチャーノ聖堂内部

添付3:ベルゴニョーネ作
「聖母戴冠」 写真:GFDL

添付4:アウレリオ・ルイーニ作
「聖人達」

添付5:地下礼拝堂

添付6:ステンドガラスラ

前回名前の出したベルゴニョーネはまだ説明していませんでした。

ベルゴニョーネは本名アンブロージョ・ダ・フォッサノ。 1453年頃トリノの南ジェノヴァの西にあるフォッサノの生まれで、 ミラノとその周辺で活躍し、1523年死亡したと考えられる画家です。

彼はレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)とほぼ同じ時代に生きた画家で、 レオナルドもかなりの期間ミラノにいたのですが、作風は全く似たところがなく、 むしろルネサンス前のヴィンチェンツォ・フォッパ風ですらあります。

やや古風なスタイルながら、彼の作品には一目で彼が描いたと判る個性と美、 観ていると心に安らぎを感じる何かがあります。

ミラノと周辺の教会や美術館に彼の作品が多く残っているのは、 同じような思いを当時の人々も共有していたからなのでしょう。

その彼の代表作と言える作品があるのがミラノの「サン・シンプリチャーノ聖堂」。

司教シンプリチャーノによる385年創建で、ミラノでは サンタンブロージョ聖堂の次に古い教会です。

ブラレ通り界隈にひっそりと佇み、外観は目立たず、 位置も大通りに面していないので、少しわかりにくい。

赤レンガに三角形の見慣れたドメニコ派のファサードは風格を感じさせます。 建物は12世紀にはロマネスク様式に改築され、その後も改築が続き、 当時の面影は正面扉周辺のみとなっています。

堂内は柱が高くそびえて大きな空間を造っています。

後陣の丸天井一杯にベルゴニョーネの大フレスコ画「マリアの戴冠」があります。

おむすび形(特に三位とマリアの後ろの光背がおむすびそっくり)の構成で 安定感と華やぎがあり、佳い絵です。改めてベルゴニョーネの力量を認識しました。

各礼拝堂には祭壇画がかかっています。

ベルナルディーノ・ルイーニはベルゴニョーネの弟子の一人だったと言われますが、 彼の息子たちは父を継いで画家になっており、 4番目の息子アウレリオ・ルイーニのフレスコ画「聖人達」もありました。

地下には建設当初の礼拝堂の一部が残されており、 ここは古代の土むきだしで、装飾性は一切ありません。 シンプリチャーノという名前の如くシンプルになっていました。

ステンドガラスはまだ新しいものですが、色鮮やかで美しい。

この教会は観光ガイドにはほとんど載っていないので、観光客は全く見かけず、 数人の信者が熱心に祈りを捧げているだけでした。