美術館訪問記 -393 サンタンブロージョ聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サンタンブロージョ聖堂

添付2:聖堂入口から見るファサード前の柱廊

添付3:柱頭彫刻「ケンタウロス」

添付4:柱頭彫刻「馬の頭が鳥の怪獣」

添付5:扉口上のロマネスク彫刻

添付6:サンタンブロージョ聖堂内部

添付7:モザイク天上画「全能の神キリスト」 
写真:Creative Commons

添付8:ベルゴニョーネ作
「キリストと天使」

ミラノ最古の教会、「サンタンブロージョ聖堂」は379年から386年にかけて ミラノ司教アンブロージョによって創建され、 ローマ帝国から迫害を受けた殉教者に捧げて、当初は殉教者聖堂と呼ばれました。

アンブロージョは、370年にミラノの首席執政官となっていましたが、 ミラノ司教アウクセンティウスの後継者選びで、宗派間の争いの調停に入ると、 民衆から、彼が司教になるべきだと強く推されて、 374年に司教に選任されるのです。

彼はその時キリスト教徒ですらありませんでしたが、 その後、頭のきれる官僚出身新ミラノ司教はキリスト教伝播に大きく貢献しました。

397年に、アンブロージョが亡くなると、その遺骸が殉教者聖堂に収められ、 その名を取ってサンタンブロージョ聖堂とされ、 アンブロージョは、ミラノの守護聖人となりました。

彼の司教式が行われた12月7日は「ミラノの日」となり、以来ミラノ市民はこの日 サンタンブロージョ聖堂に集まり彼を祝福するのが習わしとなっています。

なお、聖アンブロージョは教会における典礼の重要性を説いて、 「ミサ」という言葉を初めて用いた人としても知られています。

その後、建物は、幾度も改築が重ねられ、1099年に、ロマネスク様式で建て直され、 12世紀に回廊中庭が建設されて、現在の姿になっています。 ロンバルディア・ロマネスクと呼ばれる様式の代表格とされます。

ファサード前の柱廊のある中庭がいかにもロマネスク風。 ここには訪れる人を静かに受け入れるような厳粛な雰囲気が漂っています。

柱頭の怪獣の彫刻が単純な線彫りながら、稚拙ではなく、ユーモラスでさえあり、 面白く、ケンタウロス、天馬、妖獣、馬の頭が鳥の怪獣等様々な形態は 見ていて飽きません。

これらのロマネスク彫刻は、壁面や、扉口、聖堂の至る所に、 怪獣や人物、動植物模様として見ることができます。

  中に入ると5世紀作の金色の漆喰で描いた祭壇天蓋と835年完成の宝石で飾られた 黄金祭壇、4-8世紀作の後陣のモザイク天上画「全能の神キリスト」があります。 ミラノで初期キリスト教美術を体感できる貴重なモザイクです。

祭壇裏は半地下のクリプトになっており、アンブロージョのミイラが ガラス越しに見えるようになっています。

この聖堂の 左第1礼拝堂にはベルゴニョーネ作「キリストと天使」があります。 この絵はそれと知らねば、ベルゴニョーネの手になるとは判りづらい 彼の個性に乏しい作品です。