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美術館訪問記-39 セジェスタ神殿

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:セジェスタの神殿

添付2:神殿内部

添付3:神殿の全貌

添付4:劇場跡

シチリア島にはモザイクやアントネッロ・ダ・メッシーナ以外にも私の心を激しく揺り動かしたものがありました。

それは学生時代、友人と二人で1ヶ月、貧乏旅行をした北海道で出会った知床岬や 釧路湿原、大雪山のように原始の息吹と力強さで私に迫ってきました。

パレルモの西南にあるセジェスタの山中に鎮座する大神殿。 誰がイタリア、シチリアにこのような神殿を想像していたでしょうか。

紀元前5世紀頃にギリシャ人達によって建設されたといいます。

イタリアでは最も保存状態のよいド―リア式神殿といわれ、屋根だけがない。

正面に6本、側面には14本の円柱が並ぶ。 円柱はスライスした輪を積み重ねて出来ている。

まわりには何もなく、岩山をバックに、緑の丘陵の上に、 そのシンプルで剛直なフォルムを佇立している。 野花が僅かに足元に彩りを添える。

こういう遺跡を見る度に「夏草や兵どもが夢の跡」という感が強い。 自然に悠久の時の流れに思いを馳せる。

前に小高い山が見える。 2km近くある山道を登る。 結構きつい。

山頂には昔の住居跡の廃墟がある。 360度の眺望と、神殿が小さく遠望できる。

神殿とは反対方向に少し下った場所に劇場跡がある。

観客席は斜面を利用して作られ、眼前に山麓と海が見える。 これらを借景としてギリシャ悲劇が演じられたのでしょう。

眼を閉じると、松明に照らされた舞台と、月明かりを浴びた丘陵と海が浮かびます。 2500年前に、これらを楽しむ人々がここに坐していたのです。

日本の縄文・弥生の昔を思うと、前々回のビキニ姿の娘達といい、 彼我の差と、何がその差を生んだのか、考えざるを得ませんでした。


注:

ドーリア式:古代ギリシャ建築における建築様式の一つ。
イオニア式、コリント式と並ぶ3つの主要な建築様式に位置づけられる。 ドリス式とも呼ばれる。
古代ギリシャ建築前期のもので、柱頭に鉢形装飾や柱基を持たない。

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