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美術館訪問記-38 シチリア州立美術館

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:シチリア州立美術館入口

添付2:大フレスコ画
「死の勝利」

添付3:フランチェスコ・ラウラナ作
「アラゴンのエレアナ」

添付4:レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「受胎告知」
ウフィッツィ美術館蔵

添付5:アントネッロ・ダ・メッシーナ作
「受胎告知」

添付6:マビューズ作
「マルヴァーニャの三幅対祭壇画」

最近の3回、シチリア島のモザイク画を取り上げたので、 シチリア島はモザイクの島かと思われた方もいるかもしれません。

いえいえ、この島には殺人罪を逃れるべく立ち寄った カラヴァッジョの絵も残されていますし、立派な美術館も幾つかあります。

今日はその中の1つ、 パレルモの海岸近くにある「シチリア州立美術館」についてです

この美術館は、正方形の中庭を囲む1495年に建設された2階建ての宮殿、 アバテッリス宮殿を使用して1958年開館。

入って2室目に壁一面を占領した大フレスコ画「死の勝利」があり、 所々傷んでいるものの、大迫力で迫ってきます。 これは作者不詳ですがフェラーラ派を思わせる不条理な絵で、15世紀半ばの作。

第4室には清楚ながら気品を湛えた フランチェスコ・ラウラナの白大理石婦人胸像があります。

第10室にはこの美術館の白眉、 アントネッロ・ダ・メッシーナの「受胎告知」があります。

この絵は透明な防弾ガラスで封印されており、看視員が一人張り付いています。

普通「受胎告知」はウフィッツィ美術館のレオナルド・ダ・ヴィンチの絵のように 神の子の受胎を告げる大天使ガブリエルと、それを受けるマリアの ペアで描かれますが、この絵は書見台の前に立ち、 青い頭巾を被ったマリアの上半身のみが描かれています。

急な知らせに戸惑いの表情を浮かべたマリアの両手の表現が印象的で、 彼女を見る我々の側に、描かれていない大天使の存在を暗示する、 一目見たら忘れられない独創的な名画です。

アントネッロ・ダ・メッシーナは本名 アントネッロ・ディ・ジョヴァンニ・ディ・アントニオ。 シチリア島の東端にあるメッシーナの生まれで、ヴィンチ村生まれの レオナルド・ダ・ヴィンチ同様、出身地の名前をつけて呼ばれました。

ヴァザーリは「メッシーナはフランドルのブリュージュに行って油彩画技法を学び、 それをイタリアに伝えた」と書いていますが、 実際に彼がフランドルへ行った事を裏付ける証拠は発見されていません。

しかし彼がイタリアで最初にフランドルで完成された油彩画の技術と フランドルの細密画法を習得したのは確かなようです。

1474年「受胎告知」を描き、翌年それを持ってヴェネツィアに行き、 ジョヴァンニ・ベッリーニやティツィアーノに多大な影響を与え、 ヴェネツィア派の発展に寄与しました。

彼は2年間ヴェネツィアで絵を描いた後メッシーナに戻り、1479年死亡しています。

ヴェネツィアのアッカデミア美術館にはメッシーナの受胎告知そっくりの 絵がありますが、これはメッシーナの甥、 アントネッロ・ダ・サリバがコピーしたものでした。

第12室にはこれも防弾ガラスに守られた マビューズ作「マルヴァーニャの三幅対祭壇画」がありました。 マビューズらしい極細まで描き込んだ素晴しい傑作。

この他にもアンソニー・ヴァン・ダイクやリベーラの佳品もあり、 小ぶりながら心に残る作品群を有する美術館です。

美術館訪問記 No.39 はこちら

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