美術館訪問記-359 ラサロ・ガルディアーノ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ラサロ・ガルディアーノ美術館

添付2:ラサロ・ガルディアーノ美術館内部

添付3:ゴヤ作
「魔女の夜宴」

添付4:ヒエロニムス・ボス作
「洗礼者ヨハネの瞑想」

添付5:ヤン・ファン・ドルニケ作
「東方三博士の礼拝」

マドリードの美術施設をこれまで6つ紹介してきましたが、 スペインの首都にはまだまだ訪れるべき美術館があります。

第27回のソローリャ美術館の東500m足らずの場所にあるのが 「ラサロ・ガルディアーノ美術館」。

ホセ・ラサロ・ガルディアーノは実業家で文筆家、 著名な美術コレクターでもありました。 1947年死亡時に彼のコレクションを邸宅ごと自分で設立した財団に遺贈。

1951年に開館した美術館はガルディアーノが1903年結婚時に建設した 愛らしいイタリア風の石造りの豪邸に納まっています。

個人で収集したとは信じ難い13000点近くの絵画、装飾品の1/4ほどが 常時展示されているという館をエレベーターで4階に上がり、 順に下りながら観て行きます。

ガルディアーノは当時の現代絵画には興味がなかったらしく、 コレクションは15-18世紀のものが多く最新でも1861年作でした。

2004年に初めて訪れた時はミケランジェロの彫刻やレオナルド・ダ・ヴィンチの絵、 メムリンク、リベーラ、ベラスケスが1点ずつあることになっていましたが、 2010年再訪した時、それらは全て帰属作品やXXXXの親方、YYYY派の作品と 表示が替わっていました。スルバランもも3点が1点になっていました。

その間に学術的調査が行われたようですが、 ガルディアーノも画商のよいカモだったのでしょうか。 彼の時代には科学的検証が今ほど進んでいなかった事も起因しているでしょうが。

それでもゴヤ9点、ヒエラニムス・ボス、クラナッハ、グレコ、ムリーリョ、 ジョシュア・レイノルズ、ジョン・コンスタブルなどの絵画に加え、 金銀、象牙、七宝などの細工物や家具が所狭しと陳列されていて豪華です。

特に美術館本の表紙にも使われている、ゴヤの「魔女の夜宴」は、 彼の代表作の一つで、画面中央へ三日月が浮かぶ深夜に、悪魔の化身とされる 牡山羊へ生贄として赤子を差し出す魔女たちが描かれています。

中景として画面中央左側には贄として捧げられた赤子らの末路が示されています。

この絵は1798年頃、ゴヤのパトロンだったオスーナ公爵の別荘を飾るために 描かれた「魔女のテーマ」6連作の1点ですが、1792年、不治の病に侵され 聴力を失っていたゴヤは魔女伝承へと強い興味を抱いていました。

ゴヤは「理性の眠りが怪物を産む」と書いていますが、 この頃から後の「黒い絵」につながる、理性の裏側、つまり潜在意識の中に 潜む怪物たちを、自らの絵筆で捉えることに執心していたのです。

他にもヒエロニムス・ボスの「洗礼者ヨハネの瞑想」と、 ヤン・ファン・ドルニケの「東方三博士の礼拝」が心に残りました。

ヤン・ファン・ドルニケは1509年から1525年までアントワープで 活動していたのが確かという以外はほとんど何も判っていない画家で、 私の記憶にあるのは世界でこの作品だけです。