美術館訪問記-358 王立サン・フェルナンド美術アカデミー

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:王立サン・フェルナンド美術アカデミー

添付2:王立サン・フェルナンド美術アカデミー内部

添付3:ゴヤ作
「アトリエでの自画像」

添付4:ゴヤ作
「鰯の埋葬」

添付5:ジュゼッペ・アルチンボルド作
「春」

添付6:ジュゼッペ・アルチンボルド作
「水」
ウィーン美術史美術館蔵

添付7:スルバラン作
「子羊」

添付8:ジョヴァンニ・ベッリーニ作
「救世主」

ティッセン=ボルネミッサ美術館近く、プエルタ・デル・ソル広場の すぐ傍の大通りに面し、「王立サン・フェルナンド美術アカデミー」があります。

1752年にフェルナンド6世によって創立され、1773年現在の場所に移転。 建物は3階建ての立派なもので、堂々としており、部屋数も多い。

フランシスコ・デ・ゴヤはかつてこのアカデミーの学長を務めており、 アカデミー在籍者の中には、ピカソ、ダリ、フェルナンド・ボテロらがいます。

付属の美術館には15世紀から20世紀までのコレクションがあり、 古典絵画についてはプラド美術館に次ぐ質の高さを誇っています。

グレコ、リベーラ、スルバラン、ベラスケス、ムリーリョ、ゴヤ等を始めとする、 スペイン人画家を網羅しているのは当然としても、 ジョヴァンニ・ベッリーニ、コッレッジョ、ティントレット、ヴェロネーゼ、 リッチ、ドメニコ・ティエポロ、グイド・レーニ、ルーベンス、ヨルダーンス、 ダイク、ルカ・ジョルダーノ、アルチンボルド等、錚々たる顔触れを揃え、 3階には現代絵画のコレクションもあります。

特にゴヤは22作品もあり、「アトリエでの自画像」と「鰯の埋葬」は 中でも印象に残るものでした。

「鰯の埋葬」は題名もそうですが、描かれている情景も何の事か判らない。

帰国後調べてみると、18世紀くらいから現在も続くマドリードの伝統的な行事で、 カーニバルの最終日に行われるものでした。

キリスト教国では復活祭の前の40日間は贅沢な暮らしは避けなければなりません。

祈り、断食、慈善など禁欲と節制の日々が始まる四旬節に備えて 贅や愚行、享楽への最後の告別を目的に嬉々と踊り明かして過ごし、 最後に「鰯の埋葬」という締めくくりの行為をするのだとか。

滅多に目にしないアルチンボルドの作品も面白い。

ジュゼッペ・アルチンボルドは1527年ミラノの画家の家に生まれ、父に倣って ステンドグラスのデザインやフレスコ画を習得。

1562年からフェルディナント1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世と 3代に亘る神聖ローマ皇帝にウィーンとプラハで宮廷画家として仕えました。

この頃になるとルネサンスの安定と調和に飽き足らず、 宮廷人たちは新奇なものや驚異のものを求めるようになっていました。

アルチンボルドはその期待に応え、動植物や果物などを組み合わせた肖像画で 人々を驚かしたのです。

ここにある「春」は彼の「四季」連作画の一つで、草花のみを使いながら 全体として人物像を描いた、シュルレアリスムの先取りとも言える、 極めて独創的な作品です。

この美術館は混み合っている前述した3美術館に比べ、 訪れる人も殆ど無く、静かに鑑賞を楽しめましたた。