美術館訪問記-353 サン・ドメニコ教会

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サン・ドメニコ教会

添付2:サン・ドメニコ教会内部

添付3:フラ・アンジェリコ作
「玉座の聖母子と四聖人の多翼祭壇画」
コルトーナ司教区美術館蔵

添付4:ロレンツォ・ディ・ニッコロ作
「聖母戴冠と諸聖人達」

添付5:ロレンツォ・ディ・ニッコロ作
「聖母戴冠と諸聖人達」
フィレンツェ、サンタ・クローチェ教会蔵

添付6:ルカ・シニョレッリ作
「玉座の聖母子と聖人・天使達」

添付7:バルトロメオ・デッラ・ガッタ作
「 聖ロクス」

添付8:バルトロメオ・デッラ・ガッタ作
「聖母被昇天」
コルトーナ司教区美術館蔵

シエナでもそうであったようにフランシスコ会の教会があるところには ドメニコ会の教会もあるところが多い。

コルトーナもその例に洩れず、コルトーナの街の入口前に 「サン・ドメニコ教会」があります。

14世紀に建てられた教会ですが、1557年に改修されています。

昔はコルトーナでも最も重要な教会だったようで、コルトーナ司教区美術館にある フラ・アンジェリコの名画「受胎告知」や「玉座の聖母子と四聖人の多翼祭壇画」、 サセッタの多翼祭壇画「聖母子と四聖人達」等は、元々この教会の所有でした。

これらがあった時の堂内の華やかさはいかばかりだったでしょうか。

入口ルネッタにはフラ・アンジェリコのフレスコ画があります。 保護のためにガラスが嵌め込まれていますが、落剥してほとんど何も見えません。

内部はサン・フランシスコ教会と良く似た造りで、 単身廊の終りに十字丸天井付きのアプスがあり、 その両脇にも十字丸天井付きの小さな礼拝堂があります。

天井は木製の船底形。両側壁には礼拝堂が並び、祭壇画が置かれています。

中央主祭壇にはロレンツォ・ディ・ニッコロの多翼祭壇画 「聖母戴冠と諸聖人達」がありました。

5面あるプレデッラの下に銘板があり「1440年、フィレンツェの コジモ・ディ・メディチとロレンツォ・ディ・メディチがこれを贈る」と 書いてあるといいます。

これからも当時のこの教会が重要な存在だった事が判ります。

ロレンツォ・ディ・ニッコロは1391年から1412年にかけてフィレンツェで 活動記録がある画家で、ジョットのスタイルをより洗練した優雅な画風で メディチ家に気に入られたようです。

この多翼祭壇画はフィレンツェのサンマルコ教会のためにメディチ家の依頼で 1402年に描かれ、その後コルトーナのドメニコ会へメディチが寄贈しています。

ロレンツォ・ディ・ニッコロは「聖母戴冠」が得意だったようで、 フィレンツェのサンタ・クローチェ教会のメディチ家礼拝堂にも 1409年作の彼の「聖母戴冠」がありました。

他にもルカ・シニョレッリの「玉座の聖母子と聖人・天使達」、 パルマ・イル・ジョーヴァネの「聖母被昇天」、 バルトロメオ・デッラ・ガッタの剥離フレスコ「聖ロクス」等がありました。

聖ロクスは14世紀半ばに実在したフランス人で、ペストに対する守護聖人として 古くからヨーロッパで崇敬の対象となってきました。 絵画では、裂傷を負った脚を見せ、傍らにはパンをくわえた犬が描かれています。

バルトロメオ・デッラ・ガッタは1448年フィレンツェ鍛冶屋の息子に生まれ、 20歳で修道士になり、後にアレッツォのサン・クレメンテ修道院長となり、 1502年同地で没しています。

フラ・アンジェリコ同様、修道士で画家という生活を全うした訳です。

ガッタはイタリア語で牝猫の事で、無類の猫好きからこの名がついたとか。

コルトーナ司教区美術館にあるバルトロメオ・デッラ・ガッタの「聖母被昇天」も 元来この教会に飾られていたものでした。