美術館訪問記-351 サン・ドメニコ聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サン・ドメニコ聖堂

添付2:サン・ドメニコ聖堂内部

添付3:主祭壇後ろのステンドグラス

付4:聖女カテリーナの礼拝堂

添付5:ソドマ作
「聖痕を受ける聖女カテリーナ」

添付6:ソドマ作
「聖女カテリーナの法悦」

添付7:ソドマ作
「父なる神と聖人達」

添付8:グイド・ダ・シエーナ作
「荘厳の聖母 (マエスタ)」

添付9:マッテオ・ディ・ジョヴァンニ作
「玉座の聖バルバラ」

添付10:フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ作
「牧人の礼拝」

カンポ広場を頂点として二等辺三角形を形作るようにサン・フランチェスコ聖堂の 反対側の丘の上に「サン・ドメニコ聖堂」があります。

ドメニコ会はフランシスコ会とほぼ同時期、1206年に聖ドメニコが創始。 サン・ドメニコ教会は世界各地にあります。

シエナのサン・ドメニコ聖堂は1226年、聖ドメニコがシエナに来た翌年から 建設開始。1265年に完成した建物を核とし、1941年から1962年に行われた 徹底した修復工事により赤レンガ造りの一目でドメニコ派教会と判る 壮大な聖堂となっています。

内部は信者にも説教者にも一切障害があってはならないというドメニコ会の教えに 従って簡素な単廊式で、天井が高く広々とした空間になっています。

ここもサン・フランチェスコ聖堂同様、身廊の左右の壁面に祭壇があって, それぞれに祭壇画がかかっており、一見すると美術館のような展示にも見えます。

主祭壇後ろに大きな7枚のステンドグラスがあります。 これらが皆、子供がクレヨンで描いたようなキリストと聖人達の絵で、 素朴だが、実に力強い。活力に満ちています。 これまで随分沢山のステンドグラスを観てきましたが、他に例のない図柄です。

ここはシエナの守護聖人であるとともに、イタリア全土の守護聖人でもある 聖女カテリーナ(1347-1380)が実際に祈ったという聖女カテリーナの礼拝堂があり 聖女カテリーナの頭部と親指が聖遺物として納められています。

驚くべきことに腐敗せずに残っているそれらが実際に見られるのですが、 私のような異教徒には悪趣味としか思えない、このような聖遺物が 多くの教会で尊崇されているのだけは、何事も、さもありなんと 理解しているつもりの私もいつも違和感を覚えるのです。

聖女カテリーナは生涯を貧しい人や病める人のために捧げたほか、 歴史的にも大きな活躍をしています。

当時教皇庁のあったフランス、アヴィニョンに出向いて教皇グレゴリウス1世を 説得し、教皇庁をローマに移し戻すのに成功したのです。

この根回しのために彼女は教皇や有力者たちに頻繁に手紙を書き、 残っている300通以上の手紙は初期トスカーナ文学の傑作と見做されています。

彼女は1999年、教皇ヨハネ・パウロ2世によりヨーロッパの守護聖人の一人と されました。

聖女カテリーナの礼拝堂の大理石の小壁龕の左右に、ソドマの傑作フレスコ画 「聖痕を受ける聖女カテリーナ」と「聖女カテリーナの法悦」が描かれています。 近年修復されたようで、年代を感じさせぬ美しさです。

聖女カテリーナは聖フランチェスコ同様、聖痕を受け、 アレクサンドリアの聖女カタリナ同様、キリストと結婚する幻視を見たと 信じられているのです。

ソドマの作は他にも、身廊左壁の最後にフランチェスコ・ディ・ヴァッヌッチョの 「聖母子」を中央部に嵌め込んだ板絵「父なる神と聖人達」と、 主祭壇寄りに15枚の板絵「ロザリオのプレデッラ」がありました。

他にはグイド・ダ・シエーナの「荘厳の聖母 (マエスタ)」、 ピエトロ・ロレンツェッティの「祝福する幼児キリストを伴う玉座の聖母」、 マッテオ・ディ・ジョヴァンニの「玉座の聖バルバラ」、 フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニの傑作「牧人の礼拝」 等があり、まるで一連のシエナ・シリーズのおさらいのようでした。