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美術館訪問記-349 カジーノ・アウローラ

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:パラヴィチーニ=ロスピリオージ宮殿

添付2:カジーノ・アウローラ

添付3:グイド・レーニ作
「アウローラ」

添付4:グイド・レーニ作
「アウローラ」部分拡大図

添付5:グエルチーノ作「アウローラ」
カジーノ・ルドヴィージ蔵

前回採り上げたグイド・レーニの最高傑作と呼び声高い作品は ローマのクイリナーレの丘に建つパラヴィチーニ=ロスピリオージ宮殿内にある、 「カジーノ・アウローラ」にあります。

ここが一般公開されるのは1月1日を除く毎月1日だけ。

2009年秋のイタリア旅行は10月1日にここを訪れる事を中心に旅程を組みました。

当日少し早めに行くと、入口に警備員がいて、警備がものものしい。 定刻の10時より早く、カジーノに通じる扉が開き、螺旋階段で2階に上がると カジーノ(離れ)といわれる如く、庭園の端にポツンと目当ての館が建っています。

この宮殿はもともと教皇の甥で枢機卿のシピオーネ・ボルゲーゼが別邸として 建て、1612年から1613年にかけてこのカジーノを建設したもの。

そのカジーノの天井画を描くためにレーニは帰郷していたボローニャから 半ば強制的に呼び戻されたのです。

室内は1室だけですが相応に広い。この天井一杯にレーニの代表作とされる 「アウローラ(曙)」が描かれています。

部屋の中央に鏡が置いてあり、それに天井の絵が反射しているので、 天井を見上げ続ける無理な姿勢をとらずにすみます。

約3m x 7mのこの大作をレーニは1613年から1614年にかけて描きました。

一般に「アウローラ」と呼ばれていますが、画面の中心的位置を占めるのは 黄金の馬車に乗ったアポロン。

曙の女神アウローラに導かれて進む太陽神アポロンの周囲を巡って輪舞する 女性たちは「時」の擬人像ホラ(英語の"hour"の語源)。

四頭立ての馬車の上を飛翔する、松明を掲げた小童は明けの明星ファスフォロス。

厳密に考え抜かれた構成と理想的な肉体表現、豊かな色彩で 17世紀のローマ美術を代表する古典主義絵画となっています。

ゲーテをして「神のごとき天才」とまで激賞させた グイド・レーニの面目躍如の作品と言えます。

なお、ボルゲーゼのライバル、ボローニャ出身の枢機卿ルドヴィージが 教皇グレゴリウス15世となったのを機に、グエルチーノがローマに招かれて カジーノ・ルドヴィージ(別名カジーノ・アウローラ) の天井に 同名のフレスコ画を描いています。

残念ながらカジーノ・ルドヴィージは非公開。

グエルチーノは、レーニが亡くなったあと、ボローニャに移り、 多数の弟子や共同制作者の協力を得て多くの注文をこなし、 ボローニャ画壇の第一人者として活躍しました。

ここは撮影禁止。2階の階段を出た所から駄目ということで、 美しい庭園も撮れません。一番乗りだったためか、貴族の館の執事のような 慇懃な男性が何事に着けSirと言いつつ、親切に英語で解説してくれながら 傍に張り付いていました。

従って添付写真は最初の1枚以外はWebから借用しました。