戻る

美術館訪問記-341 大聖堂付属美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:大聖堂付属美術館

添付2:大聖堂付属美術館1階展示室

添付3:ドゥッチョ作
「荘厳の聖母(マエスタ)」

添付4:ドゥッチョ作
「荘厳の聖母(マエスタ)」前面想定図

添付5:ドゥッチョ作
「荘厳の聖母(マエスタ)」背面想定図

添付6:アンブロージョ・ロレンツェッティ作
「四聖人」

添付7:ドメニコ・ベッカフーミ作
「玉座の聖パウロ」

添付8:大聖堂付属美術館展望台からの大聖堂の眺め

添付9:大聖堂付属美術館展望台からカンポ広場方面の眺め

シエナ大聖堂に隣接して、「大聖堂付属美術館」があります。 未完成に終った大聖堂の増築部分を利用して 1870年に設立されました。

1階には大聖堂のファサードを飾っていたドゥッチョの下絵による ステンドグラスやジョヴァンニ・ピサーノの大理石彫刻群が展示されています。

どの彫像も首を前に突き出した少し無様な姿をしていますが、これらは地上に あったのではなく、数十メートルの高さから我々を見下ろしていたのです。

ここの白眉は2階の特別室。 シエナの至宝、ドゥッチョの「荘厳の聖母(マエスタ)」があるのです。

ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャは1255年頃シエナの生まれ。 1319年頃没するまでシエナで第一人者の画家として活躍しました。 シエナ派の祖と言われます。

彼はビザンティン絵画を基盤としてはいますが、人間描写や空間把握は現実感を 漂わせて来ており。チマブーエ、ジョットと共に中世とルネサンスの 橋渡しをした、西洋絵画史上重要な画家の一人です。

「荘厳の聖母」はドゥッチョの代表作で211 x 426cmの大作。

中央に玉座に座す聖母を配し、左右に聖人と天使達を並べていますが, 聖母が異常に大きく描かれ、天使達の立ち位置はどうなっているのか不明です。 この辺りは中世的な域を脱していません。

しかし少なくとも聖人たちの顔には個性があり、3次元的表現が見られます。

この絵は1260年、対フィレンツェ・モンタペルティの戦いでの奇跡的な勝利から 50周年を祝うべく、1308年、シエナ市がドゥッチョに依頼したもので、 彼は32か月をかけ1311年に完成しています。

その日シエナの街中の人が繰り出し、ドゥッチョの工房から大聖堂まで 楽隊の先導で絵を運び、お祭り騒ぎは3日間続いたといいます。

制作当時はプレデッラ(裾絵)やピナクル(飾り尖塔)を備え、 前面だけでなく背面にもびっしりと「キリストの受難伝」が描かれた、 壮大な規模と構成を誇る両面祭壇画でした。

しかし1506年、主祭壇から外され、1711年には前面と背面が分離されて 大聖堂内の2つの礼拝堂に展示され、1878年には大聖堂付属美術館に移されました。

その間にプレデッラやパネルの一部は売られたり、紛失したりしています。 現在世界の5美術館に8つのプレデッラが分散展示されています。

他にもシエナ派に属するピエトロ・ロレンツェッティ、 アンブロージョ・ロレンツェッティ兄弟やドメニコ・ベッカフーミ、ソドマ等の 良品が展示されていました。

なお、この美術館の狭い階段を上がって、更にもう一度上がった所にある 新大聖堂の遺構に作られた展望台からは、シエナの町全てを見渡せ、まさに絶景。

ここからは大き過ぎて地上からはよくわからなかった大聖堂の全体像が 把握できますし、カンポ広場のマンジャの塔や同系色の屋根や壁の連なる シエナの市街を飽きず眺められるのでした。