オルヴィエート大聖堂とシモーネ・マルティーニと来れば シエナの街と「シエナ大聖堂」に触れない訳にはいきません。
シエナ大聖堂はイタリアで最も美しいファサードをもつゴシック様式建築と 言われます。実際はこの大聖堂をモデルに造られたオルヴィエート大聖堂と比べ 甲乙つけるのは難しいのですが。
シエナ大聖堂は12世紀になって古い聖堂の跡に建築が開始され、 1264年に一応の完成をみています。全体は白大理石で覆われていますが、 随所にシエナ産の赤い石が配され、 側面はプラート産の黒大理石(濃い緑色の蛇紋岩)で縞模様が施されています。
同じく白黒の縞模様の細長い鐘楼はロマネスク様式で1264年に完成。 6層に分かたれ、最下部の単一窓から最上部の6連窓へと、 上に行くにつれ窓の数が増えています。
荘厳華麗なファサードはジョヴァンニ・ピサーノ(1250-1314)によって設計され、 彼とその工房の手になる数多くの彫刻作品で飾られています。 ファサードが一応完成したのは1376年の事でした。
現在多くのオリジナルは大聖堂付属美術館に展示され、 大聖堂にはコピーが代わりに設置されています。
内部は束ね柱の白黒の縞模様の大理石支柱により、 壮麗な3廊に分けられたラテン十字プラン。
この大聖堂がユニークなのは、色大理石と掻き絵によるモザイク画が施された 舗床です。56の部分に分かたれ、宗教的あるいは世俗的な図柄が施された舗床は 実に美しく、この大聖堂を世界に2つとない独特なものにしています。
添付4はその内の一つで、中心にシエナの象徴の「双子に乳を与える牝狼」が、 周囲の動物たちはフィレンツェなどの近隣の都市を表しています。
この舗床を完成させるためにベッカフーミを始めとする 多くの芸術家達が参加しています。 舗床ばかりでなく、内部は当代きっての芸術家達の作品で満ち溢れています。
ファサード上部には1288年に制作された、 イタリアでは最も古い作例の一つの円形ステンドグラスがあります。 ドゥッチョの下絵による「聖母の物語」が描かれています。
絵画ではピッコロ-ミニ図書館の一室全面の壁をフレスコ画で埋めた ピントゥリッキオの「ピウス2世の生涯」が凄いとしか言いようがありません。
修復されたのでしょう、汚れも色落ちもない、輝くような美麗な絵です。
ピントゥリッキオは第100回のスペッロのサンタ・マリア・マッジョーレ教会の 壁画もそうでしたが、確かな描写力で時代を感じさせない 実に鮮やかな絵を描くのです。
ピントゥリッキオはサン・ジョヴァンニ礼拝堂のフレスコ画も手懸けています。 ペルージャ生まれの彼は1513年シエナで死亡しています。
図書館の入り口脇にはピッコローミニ家の祭壇が聳えています。 大きな祭壇を飾る彫像の中で4体の聖人像(「聖グレゴリウス」、「聖パウロ」、 「聖ペテロ」、「聖ピウス」)は若きミケランジェロによって 1501から1504年にかけて制作されたものです。
これら4作品の内「聖ピウス」と「聖グレゴリウス」は共同製作者の手も 加えられており、ミケランジェロの代表作とは呼べませんが、 他の2体には力強さや鋭い眼差しなどが表現されミケランジェロの力量が伺えます。
右側廊にも彫刻の傑作があり,ベルニーニの「聖ヒエロニムス」, 「マグダラのマリア」が見られます。
ドメニコ・ベッカフーミ作の8体のブロンズ像「燭台の天使」もあります。 初めて来た時は、ベッカフーミは絵だけでなく、彫刻も巧みなことを知って 驚いたものでした。