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美術館訪問記-329 サン・ピエール礼拝堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サン・ピエール礼拝堂

南仏ニースの東に隣接してヴィルフランシュ=シュル=メールという小さな町が あります。ここにある「サン・ピエール礼拝堂」はジャン・コクトーが 最初に手掛けた礼拝堂装飾です。

1956年10月から1957年7月にかけての事でした。

この礼拝堂は16世紀後半に近在の漁師の為に建てられたと伝えられます。 漁網置き場になっていたこの礼拝堂の内壁やファサードを ジャン・コクトーが全面的に装飾し直したのでした。

なんとコクトーはこの作業を町と漁師たちのために無償で行っていました。

ファサードは水平2分割方式で、それぞれ両脇に壁龕があり、 上段には十字架が入れられており、下段はステンドグラスになっています。 その他の壁面はピンクと白で塗られています。 コクトーらしい軽快な感じ。

小さな教会ですが入口に女性が二人いて入場料3ユーロを払いました。 写真を撮ろうとすると撮影禁止だと英語で言います。

フレジュスの教会では問題なかったのですがと言うと、あちらは公共の 持ち物ですが、こちらはプライベートな漁師の持ち物ですのでと言いました。 この教会は今でも漁師組合の所有になっているようです。

従って礼拝堂内部添付写真はWebと絵葉書からのものです。

内部はほとんど墨絵に近い淡い彩色でアーチ状の天井と壁面全てが コクトーの世界を作り出しています。

ヴォ―ルト(アーチ形天井)と一部の帯状の幾何学模様以外は、 大きく5つに分けられます。 その内の2つは地中海生活を、残りの3つは聖ピエールの生涯を描いています。

ヴォ―ルト全部はヴィルフランシュの漁師へのオマージュです。 漁師の姿をした25人以上の天使と 熾天使(天使の9階級の内の最上位で頭と羽だけで表されている)が無重力状態で 空中を乱舞しています。

祭壇部分はヴィルフランシュの若い女性達へのオマージュ。 土地の幅広帽子とハンカチーフを頭に着けた女性達がその日の海からの獲物を 処理したり、空飛ぶ天使か太陽と雲のある空を見つめいたりしています。 その右手には二人の漁師が同様に上を凝視しています。

右壁部分にはヘロデ王に捕らえられ牢に入れられて睡眠中の 聖ペテロ(仏語ではサン・ピエール)を天使が救い出す様が描かれています。

入口ファサード裏の壁には扉の両側に燭台が描かれ、 その炎の部分は人の目になっていました。

床は昔からの石畳。

買った小冊子にコクトーは「この礼拝堂は一人の人間がその全てを作り上げた 最初の例である」と誇らしげに書いていました。

(添付2:サン・ピエール礼拝堂内部、添付3:ヴォ―ルト部分、添付4:祭壇部分、添付5:右壁部分および添付6:入口ファサード裏 は著作権上の理由により割愛しました。
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