マントンにある要塞美術館から100m足らずの場所に 2011年11月開館の「ジャン・コクトー美術館」があります。
スイスの高級時計コルム社のオーナーであり、美術収集家でもある セヴラン・ワンダーマンは世界有数のコクトー・コレクションを築き上げます。
彼はその膨大なコレクションをコクトーの故郷フランスで 展示したいと考えていました。
その招致に名乗りをあげたのが、コクトーにゆかりの深いマントン市。
フランス文化省の後押しを得て精力的に動いた結果、 2005年に990点のコクトー作品と、840点の関連作品の寄贈が実現し、 この美術館開設の運びとなったのです。
2006年にグランプリ・ナショナルを受賞したフランス人建築家 ルディ・リッチオッティ設計で、コート・ダジュールの海岸の直ぐ傍に立つ、 ジグソーパズルの一片のような形の白い幅広の柱列に囲まれた シンプルながらモダンな平屋建てです。
この美術館には、コクトー作品から着想を得たさまざまな仕掛けが 隠されています。エリザベート・ド・ポルザンパルクが手がけた 建物内部の空間デザインは、一見奇抜な外観とは対照的に、 展示作品を最大限に引き立てる、白で統一された簡素なスタイルになっています。
前にコクトーがデザインした巨大なトカゲのモザイクが敷き詰められた 広いスペースがあります。地上階と地下一階の広々としたスペースを テーマ別に仕切りつつ、概ねコクトーの幼少期から晩年までの作品を 時系列で展示しています。
コクトーが生涯追い続けた「オルフェ」、「ダルジュロス」などはテーマで まとめられていますが。
常に「詩人」を自認していたコクトーが「絵画の詩」と呼んでいた作品群。 そのコレクションの約1/5が定期的に置き換えながら常設展示されているとか。
私が訪れた日にはデッサン116点、リトグラフ40点、陶器11点、 ミックスド・メディア7点、パステル画6点、エッチング5点、油彩画3点、 タペストリー2点、旗1点、シルクスクリーン1点、ポスター1点、詩集6冊、 画集2冊、詩画集3冊、書簡集1冊、映画のシナリオと映画のシーンから 21写真を収めた本1冊、という多彩な展示でした。
これにコクトーが被写体となった写真38点、本人が撮った写真1点が加わります。 コクトーが好きな人には聖地でしょう。
ここも館内は撮影禁止。コクトーがらみの施設は皆同じようです。 従って館内写真はWeb公開写真を借用しました。