戻る

美術館訪問記-320 バンベルグ財団美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:バンベルグ財団美術館

添付2:バンベルグ財団美術館内

添付3:ルーカス・クラナッハ作
「少女の肖像」

添付4:アンドレア・プレヴィターリ作
「若い男の肖像」

添付5:アンドレア・プレヴィターリ作
「アントニオ・テバルデオの田園詩より」
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

添付6:ピエール・ボナール作
「赤いガウンの女」

添付7:ピエール・ボナール作
「自画像」1930年

添付8:ピエール・ボナール作
「自画像」1945年

ピエール・ボナールの油彩画を常設展で一番多く観たのは フランス、トゥールーズにある「バンベルグ財団美術館」。

建物は川沿いにある15世紀に建造されたアセザ館で、ルネサンス時代に 藍染料や穀物の交易で富を得た商人の豪邸が美術館になっています。

アセザ館は個人の館だったとは信じられない宮殿のような巨大な建物で、 石畳が敷き詰められた中庭を持つ南部フランスのルネサンス建築の最高峰です。 現在はトゥールーズ市の所有になっており、1995年美術館として開館。

所蔵品はジョルジュ・バンベルグ(1915-2011)のコレクションに基づいています。 ジョルジュはドイツで財を成した裕福な商人の子としてブエノスアイレスに生れ、 パリとアルゼンチンの間を行き来しながら幼年時代を過ごします。

ハーヴァード大学で英仏比較文学を学び、プロ並みのピアニストでもあり、 英仏語による小説・戯曲も出版しているという才人です。

ハーヴァード大学で学んでいる時にニューヨークの画廊でピサロのデッサンに 魅せられ、200ドルで購入したのを契機に美術コレクションを開始。

最初はニューヨークで、第2次大戦後はパリで美術収集を進めた彼は、 終戦後の美術市場の価格下落にも助けられ、古典から近代絵画、彫刻の 一大コレクションを築き上げるのです。

オールド・マスターが2階に、近代絵画が3階に展示されています。 ここのコレクションは個人が集めたものとしては世界最高レベル。

2階にはカルパッチョ、クラナッハ、ロレンツォ・ロット、ティツィアーノ、 ティントレット、ヴェロネーゼ、パリス・ボルドン、ヴァン・ダイク、 ティエポロ親子、カナレット、ブーシェ等が居並ぶのですから壮観です。

特に印象に残ったのはアンドレア・プレヴィターリ(1480-1528)の 「若い男の肖像」。緑色の背景に毛皮を着た長髪の青年が 3/4向きの姿勢で描写されています。活力のある絵です。

プレヴィターリはジョヴァンニ・ベッリーニの弟子で主にベルガモで活躍しました。

彼は「ジョルジョーネでなかった画家」としても有名です。

英国の美術史家で1933年、30歳でロンドン・ナショナル・ギャラリーの 館長になり、日本語訳も多い幾多の美術書を出版し、美術に関するテレビを 通しての啓蒙活動でも知られ、一代限りの男爵も授爵したケネス・クラークが、 1937年、ジョルジョーネ作とされていた4点の小品を美術館用に破格の高額で購入。

後にこれらの作品はアンドレア・プレヴィターリの作とされたのでした。

3階にはブーダン、ピサロ、ドガ、シスレー、セザンヌ、ルドン、モネ、モリゾー、 ルノワール、カイユボッテ、ゴーギャン、シニャック、ロートレック、マティス、 ヴュイヤール、ルオー、マルケ、ヴラマンク、デュフィ、ドンゲン、ピカソ、 ブラック、ユトリロ、モディリアーニ、ココシュカ等。

古典絵画から近代絵画までよく個人でこれだけ集められたものです。

驚嘆したのはボナールの35作品のコレクション。3階の広い一室そっくりが ボナールに捧げられています。有名な彼の自画像2点も含まれていました。