美術館訪問記-312 フード美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:フード美術館外観

添付2:フード美術館内部

添付3:ペルジーノ作
「聖母子と諸聖人」

添付4:サッソフェッラート作
「聖母子」

添付5:サッソフェッラート作
「祈りの聖母」
ロンドン、ナショナル・ギャラリー蔵

添付6:ポンペオ・バトーニ作
「第2代ダートマス伯爵ウィリアム・レッゲ」

添付7:アルマ=タデマ作
「彫刻ギャラリー」

添付8:ヴュイヤール作
「ヴァスイの海岸」

ボストンから北北西に200km足らずの場所に、人口11000人余りの ニューハンプシャー州ハノーヴァー町があります。

ここに1769年創立でアイビー・リーグでは最北にあるダートマス大学があります。 全米最古のMBA(経営学修士)であるタック経営大学院を抱える総合大学です。

「フード美術館」がその大学付属美術館。1772年開館と大学付属美術館としては 米国最古で6万5千点以上の所蔵品があります。現在の建物は1985年完成。

ペルジーノの出来のよい大型宗教画が部屋の正面から迎えてくれます。

殺到する注文を捌くために大工房を構えて、パターン化したデザインで描いていた ペルジーノらしく、何処かで観た要素が集まっていますが、それでも素晴らしい。

ペルジーノの聖母子に比べると、およそ150年後に描かれたサッソフェッラートの 聖母子は、ぐっと現代的で、まるで庶民の母子のようになってきますが、 生き生きとして生命力があり、360年前に描かれたとは思えない親近感があります。

サッソフェッラートの本名はジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ(1609-1685)。 イタリア中部、マルケ州の出生地サッソフェッラートの名前で呼ばれる事が 多いのですが、本名のサルヴィで表示されている事もあります。

画家だった父親から学んだ後ローマを活動拠点として、 アンニーバレ・カラッチの弟子ドメニキーノに師事しており、 グイド・レーニはメンターの役割を果たしています。 時代はバロックですが、古典的かつ端正な宗教画に真骨頂を発揮しました。

彼の最高傑作はロンドンのナショナル・ギャラリーにある「祈りの聖母」でしょう。

漆黒の背景が聖母のみを浮かび上がらせ、白いヴェールと赤い服、 ウルトラマリンのマント、黒い闇の空間的バランスと色彩が見事です。

マリアの端正な顔と相まって、当美術館の聖母とは異なる、 思わず観る者を敬虔な気持ちにさせる神性を備えています。

この絵は評判が高かったようで、サッソフェッラートは同じような絵を 幾つも残しています。

他にもイタリア、フランス、イギリス、アメリカの画家達の作品が数多くある中で、 ポンペオ・バトーニの良品肖像画2点、アルマ=タデマの佳品「彫刻ギャラリー」、 ヴュイヤールの珍しい海岸風景画が特に印象に残りました。

深く記憶に刻まれたのは、背中を斜めに糸で刺繍したような インディアン女性のヌード写真で、これは体罰なのか、祈りの表現なのか、 祭事に関係している事なのか、ファッションなのか、それとも単なる傷痕なのか、 キャプションには何も書いていないのでした。

(添付9:レベッカ・ベルモア作「房飾り」 は著作権上の理由により割愛しました。
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