美術館訪問記-310  ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館入口

添付2:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館裏側

添付3:ギルバート・ステュアート作
「ジョージ・ワシントン」

添付4:ステュアート作
「ペレス・モートン夫人」ウースター美術館蔵

添付5:ジョン・ホワイト・アレクサンダー作
「青い鉢」

添付6:ドラクロワ作
「旅するアラブ人達」

添付7:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館大広間

添付8:マティス作「レモンのある静物」

添付9:エジプトの青色の河馬と魚の彫像

ニューへヴンから東へ140km程の所にアメリカ合衆国で面積最小の州、 ロードアイランド州がありますが、その中心都市、プロヴィデンスに ロードアイランド・スクール・オブ・デザインという美術大学があります。

「美大のハーヴァード」と呼ばれる全米で受験倍率の最も高い美大の一つで 1877年創立。世界50カ国の学生がいる世界的に有名な美術大学です。

ここの付属美術館「ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館」は 大学創立の年に開館。

坂の途中に建っているため、入口から見ると2階建てですが裏から見ると6階建て。 建物が継ぎ接ぎで複雑な形状をしており、受付でフロアー・ガイドを貰って チェックしながら廻らないと、見落としが出そうな危惧があります。

入るとペンデルトンハウスという、昔は個人の住宅だったような展示場です。 200年は経っていそうな家具や調度品の置かれた部屋が4部屋あり、 絵画や装飾品も沢山あり、ジョン・シングルトン・コプリー作の肖像画と よく見るギルバート・ステュアートのワシントン像がありました。

ギルバート・ステュアート(1755-1828)は地元ロードアイランド州の生まれで 幼少時から画才を発揮。スコットランド出身の肖像画家コスモ・アレキサンダーに 14歳から学び、一緒にスコットランドへ行きますが、コスモの死で17歳で帰郷。

アメリカ独立運動を避けてイギリスへ渡り、ベンジャミン・ウエストの下で 6年間修業します。その後描いた肖像画で大成功し、英国でも有数の肖像画家に なるのですが、浪費癖が強く、借金を重ねて逃げるように本国へ戻り、 フィラデルフィアに1795年スタディオを開きます。

この時描いたワシントン大統領の肖像画が絶大な人気を呼び、彼は130点も複製を 作り、売り捌きます。皆さんもこのワシントン像を目にした事があるでしょう。 アメリカの美術館にはたいていありますし、1ドル札の原画にもなっていますから。

彼は6代の大統領の肖像画を残し、1000人以上の肖像画を描き、 米国本国で成功した最初のアメリカ人画家と言えるでしょう。

第68回のウースター美術館で観た彼の肖像画「ペレス・モートン夫人」は、最初、 印象派のものと錯覚したぐらい、色彩も鮮やかで、タッチの跡も生々しい。

ステュアートは当時誰もが描いていた下絵を描かず、直接カンヴァスに描き、 次のように書き遺しています。「色を控え目にしてはいけない。 たくさん色を使うこと。しかし、できる限り色を別々に置くこと。 色を混ぜてはいけない。色の美しさと鮮やかさが生む効果を壊す事になる」

彼がこの絵を描いたのは1802年頃。印象派に70年以上先駆けています。

ペンデルトンハウスは欧米絵画を展示している広い別棟と繋がっていました。

4階の米国美術展示ではホーマー、ベンソン、チェイス等の佳作が並んでいます。 中でもジョン・ホワイト・アレクサンダーの「青い鉢」という青いデルフト焼きの 鉢を右手の上に持った若い女性の後ろ姿を大胆な構図で描いた絵が印象的でした。

彼は肖像画家として成功を修め、幾多の有名人を描き、出身地のピッツバーグに あるカーネギー美術館の入り口ホールの3階ぶち抜きの大壁画も描いています。

5階のヨーロッパ絵画ではドラクロワ、コンスタブル、ゴヤ、グアルディ、 ロイスダール、スピネッロ・アレティーノ等が眼につきます。

隣の部屋は大部屋になっており、長方形の大広間の4方の壁に昔風にびっしり 絵画が123点飾られています。無名のものが多いが、バッサーノ、コロー、 クールベ、ドーミエ、ゲインズバラ、ジェリコー、ヨルダーンス、 レイノルド等も含まれています。

その隣の3部屋はフランスで活躍した画家が集められ、セザンヌ、ドガ、 マネ、モネ、モリゾー、ピサロ、ルノワール、ルソー、ゴーギャン、ゴッホ、 マティス、等が豪華に並んでいます。

その奥には古代の部屋があり、ローマのモザイクやポンペイの壁画等があります。

6階に上がるとエジプトの部屋。幾つもの彫像や棺、レリーフ等の中で 3600年から4000年前に作られたという青色の河馬の造形と紋様、 4300年前の魚の彫像の現代性に驚きました。

隣のアジアの部屋にはインドの仏像、中国の壁画、日本の浮世絵、駕籠、 10世紀作の大日如来像もあります。

3階の20世紀の部屋には、ココシュカ、マティス、デュフィの佳品がありました。